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トランプ米大統領がブラジルとアルゼンチンに課税宣言=鉄鋼とアルミの輸出に対して=通貨安での価格下落対策=ボルソナロには寝耳に水

トランプ大統領(Shealah Ctraighead)

 2日、米国のトランプ大統領は、ブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼とアルミに課税を行うことを自身のツイートで宣言。ブラジル内に大きな衝撃が走った。同日付現地サイトが報じている。

 トランプ大統領はワシントン時間の午前7時59分(ブラジリア時間午前9時59分)に行ったツイートで、「ブラジルやアルゼンチンは二国共、自国の通貨価値を相当落としている。それはわが国の農家にとってよくないことだ」とし、さらに「そこで私は、この両国に対し、鉄鋼とアルミの輸入に対して関税を行おうと思う」と書いた。
 続けて、「連邦準備制度(米国の中銀)は(ブラジルやアルゼンチンなど)多くの国が、実際以上に自国通貨の価値を下げることで利益を受けるのをやめさせなければならない。そうしないと、わが国の農工業者が自分たちの生産した品を輸出するのが非常に苦しくなる」とも書いた。
 これは、ブラジル政府にとっては寝耳に水だった。この報を聞いたボルソナロ大統領は、「ゲデス経済省と話してみる。もし必要とあらば、私が自らトランプ大統領に電話をかけよう」と語った。
 今回のトランプ発言は、大統領選の時点から何度もトランプ氏への敬愛を語り、大統領就任後も熱心な親米ぶりを示していたボルソナロ氏には痛いものだった。ブラジルの財界も、かなりの親米派の同氏が大統領になることで、米国とのつながりが強化され、それが長らく沈滞を続けていた景気活性につながることを期待していた。
 ボルソナロ政権がレアル安を放置した結果、11月下旬には1ドルが過去最高の4・20レアルを突破していた。
 ブラジルは工業部門での不振が長引いているが、米国には2018年に約26億ドル分の鉄鋼輸出が行われており、課税が実行(再開)されると、輸出、さらに雇用に大きな痛手となる。ブラジルは米国にとって、代表的な鉄鋼や鉄鉱石の輸出国だ。
 また、アルゼンチンもここ数年、ハイパー・インフレでペソ安状態が続いていた。課税が実行されると、アルゼンチンにとってはもちろん痛手だが、同時に同国の最大の貿易国であるブラジルへの影響も懸念される。
 課税率などの具体的なことには触れられていなかったが、トランプ大統領は18年3月にも、諸外国に対して、鉄鋼で25%、アルミで10%の課税を宣言。そのときはブラジルも抗議を行い、8月に同大統領が緩和策を出すなどの対処が行われていた。
 今回のトランプ大統領の発言の背景には、来年行われる大統領選に備えて、米国内の工業関係者を喜ばせたいとの思いがあると思われる。同大統領は下院でウクライナでのスキャンダルに基づいた罷免審議を起こされ、苦しい立場にある。