ブラジル日本文化福祉協会の文芸委員会(林まどか委員長)は『2019年度にっけい文芸賞授賞式』を先月23日午後1時から、文協ビル貴賓室で開催した。受賞者と家族およそ80人が集まり、栄えある賞の喜びを分かち合った。日本語部門では、選考対象の書籍10冊中、栗山舎人氏の短編集『ある移民の生涯』が入賞、ライムンド・ガデリャ氏の歌集(3言語)『二重の地平線』が特別賞を受賞した。
冒頭、文協の山下譲二副会長は祝辞と共に、「文芸賞は、日本移民111年の歴史の中で意味合いが変化した。ブラジル社会にどう貢献するか考えなければならない」と問題提起し、「これからの在り方を考える場にしたい」と述べた。
日本語部門では、入賞作の『ある移民の生涯』について、選考委員会の中田みちよ委員長が「移民の純朴な人生が、読み手の多大な共感を呼ぶ。独力で書いている点も素晴らしい」と講評。
特別賞作の『二重の地平線』については、「生粋のブラジル人の歌集で、その意気込みを評価した」と語る。一方、団体が発行する記念誌については、「人員・経済面で格が異なり、個人出版物と同じ土俵で論ずるのは難しい」と、委員会へ再考を要請した。
続いて、ポルトガル語部門とマンガ部門の各選考委員会から講評が読まれ、受賞者8人も発表された。マンガ部門は、3人の女性グループ『ポン・ポン・ポン』が1位を受賞。実体験をもとに、ブラジル生まれの子供が日本の近代文化にぶつかりながら、困難を乗り越える様子を描いた。
欠席した栗山氏を除く受賞者全員が表彰状を受け取り、日本語部門を代表して特別賞を受賞したガデリャ氏が登壇し喜びを口にした。さらに浜田一穴さんの紹介で『第10回全伯俳句大会』の受賞者らが壇上に上り、メダルを授与された。
ガデリャ氏はパラー連邦大学新聞科卒の親日家。若い頃に石川啄木の短歌と出会い、日本の上智大学に留学した1985年には、日本で短歌を初めて書いている。「本当に嬉しい。短歌を初めて読んだ時、とても美しいと思った。これからも歌集を発表していきたい」と意欲を語った。
中田委員長は「特別賞を授与したガデリャ氏のように、日系文学は今後さらに多くのブラジル人が参加する可能性を秘めている」と日系文学の将来について語った。
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『2019年度にっけい文芸賞授賞式』では、文芸委員会の林まどか委員長が「ポルトガル語部門は239作もの応募があり、作品数の伸びには目を見張るものがあった」と言い、受賞者も3位まで選ばれた。一方、日本語部門は書籍10冊で、受賞は2人。日本語による書き手の減少もあるだろうが、書籍にすると出版代がかかる分、ハードルが高くなる。次回からは、書籍を刊行せずとも応募を受け付けてみてもいいかも?