セルジオ・モロ法相肝いりの法案、犯罪防止法(PL10372/18)基本文書が4日の下院本会議で、賛成408、反対9、棄権2で承認されたと、5日付現地各紙が報じている。
承認された本文には、禁固刑の最長期間をこれまでの30年から40年に変更したり、使用制限のある銃器を使っての殺人の刑期を6~20年から12~30年に変更するなどの内容が残されている。
しかし、今年1月にモロ法相が提出した原案の主眼だった、「2審有罪判決の時点で刑を執行する」や、「警官が職権乱用や越権行為を犯した時も、場合によっては減刑となる(Excludente de Ilicitude)」の2項目は取り除かれた。
Excludente de Ilicitudeで想定される減刑条件には、警官が過剰な心理的プレッシャーを受けていた、恐怖にさらされていたなどが明記されていたが、反対する政治家たちは「殺しのライセンスだ」と強く批判していた。
また、モロ派の政党Novoは、「捜査開始を認める判事と、起訴を受け付け、判決を下す判事は別でなくてはならない」の項目を取り除こうとして修正動議を出したが、同項目の継続には256人が賛成し、反対は147人だった。また、モロ法相は「罪を自白した犯罪者には減刑を認める」という条文も含めたがっていたが、これも取り除かれた。
骨抜きにされた状態の法案承認は、モロ法相やラヴァ・ジャット推進支持派議員たちにとって、敗北といえる。
モロ判事はここ2カ月間、バンカーダと呼ばれる議員団のリーダーや、各政党の幹部クラスと会合を持ち、原案のままで承認するようにとの働きかけを行っていた。
原案が骨抜きにされる可能性が濃厚といわれる中、同法相は採決直前まで、下院最大の超党派の会派「セントロン」所属議員たちと2度の会合を開くなどして支持を訴えたが、実らなかった。
採決当日も、モロ法相は議員たちに“最後のお願い”を行ったが、法案の骨抜きを試みた野党勢力やセントロンは、法相らが原案通りに戻したいと願った30項目の内、4項目だけを原案のまま承認した。
保たれた項目の中には「検察が必要と認めた場合は、最厳重警備の拘置所内での被疑者と弁護士の会話を録音することを認める」などがある。
同法案は今後、上院での委員会審議、本会議審議、採決へと進む。
モロ法相は4日の午後10時過ぎに、「(犯罪防止法に関して)重要な進展があった。下院議員の皆さんを祝福したい。しかしながら、法案には多少、変更すべき点がある。法案をよりよいものにするため、議会との対話を続けていく」と、敗北ムードを打ち消す内容のツイートをした。
議員たちからは「犯罪防止はモロ法相の専任事項ではない」、「犯罪撲滅を(モロ法相という)スーパーヒーロー独りの役割とすべきではない」などの声が上がった。