アルゼンチンで10日、左派のアルベルト・フェルナンデス氏の大統領就任式が行われた。選挙前から右派のボルソナロ大統領と激しい舌戦を繰り広げていた同氏だが、28ページもあった就任宣言文の中では、ブラジルを唯一名指しして「為政者の政治的主義の違いを乗り越え、より一層の強い関係を築きたい」と、2国関係の将来的展望を語った。10日付現地サイトが報じている。
10日の就任式は大統領官邸のカーザ・ロザーダではなく、首都ブエノス・アイレスの連邦議会で行われた。
これは、副大統領として政権復帰するクリスチーナ元大統領の夫、ネストル・キルチネル大統領が2003年に就任した時にやって以来、キルチネル政権が行ってきた就任式のやり方を踏襲したもので、15年にカーザ・ロザーダで就任式を行ったマクリ前大統領のやり方を否定するものだ。
就任式にはマクリ前大統領も出席したが、同氏の入場の際には、会場にいた人からペロン派(ペロニスタ)の歌が歌われるなど、対立ムードは強かった。
就任式でフェルナンデス氏は「飢餓対策」「政治二極化の解消」「経済危機回避」「負債再交渉」「司法改革」「南米諸国との関係構築」をモットーに掲げた。
同じペロニスタでも、左翼系ポピュリズムの印象の強いキルチネル夫妻とは異なり、財務省担当の弁護士もつとめていたフェルナンデス氏には、破綻した財政再建の期待が託されている。同氏は就任式で、「国際通貨基金(IMF)と建設的で協調的な関係を作れるよう模索する」と語った。
「司法改革」に関しては、「アルゼンチンの司法は偏向がある」とし、11件で捜査を受けているクリスチーナ氏を助ける姿勢を隠さなかった。
ブラジルとの関係についても、フェルナンデス氏は「為政者の主義の違いを乗り越え、これまで以上に野心的、革新的、創造的な関係性を築いて行きたい」と前向きに語った。
ボルソナロ大統領は、アルゼンチンの大統領選後に持たれた保守派のマクリ氏との首脳会談後の演説で、「アルゼンチンがキューバになってしまう」とフェルナンデス批判をしたことが、外国の選挙への干渉にあたるとみなされ、「外交辞令を破った」と問題となっていた。一方、フェルナンデス氏やクリスチーナ氏も、懇意だった左派ルーラ元大統領の釈放を求めるなど、敵対的な挑発行為を行っていた。
ボルソナロ大統領はフェルナンデス氏の当選直後に、「就任式には参列しない」と宣言。さらにキューバのラウル・カストロ議長らが招待されていると知ると、「ブラジル大使だけ出席」という最低のカードを切ろうとしたが、周囲から「隣国は南米最大の貿易相手国だ。現実的判断を」と説得されたため、前日になって、アミウトン・モウロン副大統領を参列させることに決めた。