「首里城再建! ちばりよーうちなー!」――ブラジル沖縄県人会・ブラジル沖縄文化センター(上原ミウトン定雄会長)は、10月末に主要建物が焼失した首里城再建に向け、寄付を呼びかけるイベント「ちばりよーうちなー ~皆で首里城の再建を~」(上原テリオ実行委員長)を8日午後、サンパウロ市のブラジル沖縄県人会本部会館にて開催した。50レアルの寄付が入場料代わりだったにもかかわらず約700人が来場し、約300人の演者も自ら払って参加し、首里城再建への熱い想いを共有した。(6面に関連写真グラフ)
入場料やTシャツなどのグッズ、沖縄そばや弁当販売などの全収益が寄付に充てられ、寄付金は入場料だけで約5万レになった。島袋栄喜副実行委員長によれば「入場料とは別に、寄付金を置いていった人もいた」とのこと。
開会式で上原県人会会長は「首里城の焼失に多くの人が心を痛めている。再建のために様々な支援を実施し、一日も早い復興を祈りたい。今日は各芸能団体、青年部が自分の予定をキャンセルして集まってくれた。出演者、来場者の皆に感謝する」とあいさつし、客席から拍手が送られた。
当日のプログラムは2部構成。第2部ではブラジル琉球舞踊玉城流扇寿会代表の斉藤悟さんによる創作歌舞劇が上演された。2週間で特別に作り上げた琉球王朝を舞台にした新作歌舞劇。王が代替りする際、中国から皇帝の名代として使者を招き、琉球国王を任命するという場面を再現した。
まず白い衣装に身を包んだ4人の祝女(のろ)が現れ、神への祈りをささげた。太鼓の胴を木材に見立てて振り回し、「首里城を建てる様子を再現した」という「国頭(くんじゃん)サバクイ」を、レキオス芸能同好会エイサー太鼓が迫力ある演奏で表現した。
続いて会場後方から国王を先頭とする行列が舞台へと進み登壇。上原フェリペさんが演じる王と斉藤さん演じる王妃が優雅な舞いを見せた。上り口説(ぬぶいくどぅち)や武道の舞いなどのショーを繰り広げ、演者による華やかで緩急ある演目に観客は見入った。
なお第1部では沖縄民謡、空手、太鼓などのショーが披露された。子どもだけの太鼓演奏では、掛け声を上げ舞う無邪気な姿を、観客は温かい笑顔で見つめた。ブラジル健康表現体操協会(川添敏江会長)も特別に招待を受け出演した。
沖縄ソーシャル・ダンスの「島ぬリミックス」では、BEGINの代表曲『島人(しまんちゅ)ぬ宝』をアレンジした楽曲に合わせ、ミュージカルのように歌い踊り会場を盛り上げた。
最後は出演者ら関係者、来場者一同で「首里城再建! ちばりよーうちなー!」と声を上げ、記念撮影を行った。
20年ほど前、デカセギで訪日した際に首里城を見たという仲地美津子さん(78、二世)。「焼失のニュースを見た時は言葉が出なかった。あんなにきれいだったのに」と悔やみながらも「再建を願い、沖縄を思う多くの人の協力がこのイベントという形になったのは、素晴らしいと思う」と笑顔を見せた。
第2部の歌舞劇を創作した斉藤さんは「首里城は沖縄芸能のシンボルでもあるので、見るたびに緊張する。2週間での準備は大変だったが、出演者も沖縄の歴史や芸能を理解していたからできた。楽しかった」と達成感を見せた。
同県人会の各支部でも寄付を募っており、募金のための銀行口座も開設している。来年2月10日に県庁へ送金する予定だ。
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首里城再建の寄付を呼びかけるイベント「ちばりよーうちなー ~皆で首里城の再建を~」は、予想された通り、盛況のまま幕を閉じた。首里城の焼失は、日本の歴史遺産の損失とともに、沖縄県人を中心とした多くの人々の精神的苦痛を招いた事件だった。しかし焼失から1カ月ほどで今回のイベント開催に至り、アメリカ大陸でも寄付を募る動きが見られるなど、世界のウチナーンチュの絆を再確認できた。火災は不幸な出来事だが、これをバネにウチナーンチュの絆を一層深めてほしいところ。