今年で創立60周年を迎えたサンパウロ日伯援護協会(与儀上原昭雄会長)は、日伯友好病院の新病棟建設の定礎式を11日午後、サンパウロ市パルケ・ノボ・ムンド区の建設予定地で行った。現在の本館と直結する形で地上6階(日本式なら7階)、地下3階建ての新病棟を建てる。病床を増やし、周辺に点在する診療所を本館内に集約する方針。さらに本館内の配置転換、最新医療機器の導入などで機能効率化・強化を図る。2022年中の竣工予定で、質の高い医療サービス提供を目指す。
同病院では現在、30以上の診療所が本館外に散らばっている。本館直結の新病棟建設により、全てを拡大後の本館内に統合する。救急医療センター、手術センター、集中治療センター、産婦人科を拡張し、駐車場や医薬品貯蔵庫も拡充する。
昨年の段階で病床数244、敷地面積4899平米だったところを、病床を100床増やし、敷地面積も6439平米となる。今後雨季に入るため、本格的な建設工事開始は来年4月頃。竣工は2022年中の予定。
定礎式には山田彰駐ブラジル全権大使、野口泰在サンパウロ総領事、佐藤洋史・国際協力機構(JICA)ブラジル事務所所長、石川レナトブラジル日本文化福祉協会会長(サンタクルス病院理事長)、援協理事、同病院職員ら約150人が出席した。
与儀援協会長は「今回の拡張事業を通して、医師と看護師ら職員、理事の心が一つになっていることを改めて確認した。今以上に病院の利用者が安心できる環境作りを目指し、拡張事業と並行して新設備の導入も進めていく」と今後の展望を語った。
天内ワルテル院長は病院の歴史や、現在の国内の医療界における同病院の位置づけを解説。国内の医療機関グループで、同病院は単独の医療機関ながら救急医療センター対応件数2位、総診察数でも4位と国内有数の医療機関に成長している。
国内の医療機関を評価する「ブラジル優良病院認定協会(Organização Nacional de Acreditação=ONA)」からも、2016年に最高評価のレベル3の認定を受け、継続している。
国外のカナダ医療機能評価機構(Accreditation Canada International=ACI)の国際認定「QMentum」取得も今年決定し、来年中に表彰を受ける予定。
山田大使は「同病院が国内有数の優良病院に数えられるまでに成長したことを祝いたい。また今回の拡張でさらに前進する姿勢に敬意を表したい」と称賛した。
佐藤所長は、JICAの前身の国際協力事業団が土地と建物を払い下げ、跡地に同病院が建設されたことに触れ「JICAと同病院には素晴らしい縁がある。同病院が計画的に事業を進め拡大し、高度な医療を提供している発展ぶりを大変嬉しく思う」と祝意を表した。
石川文協会長は同病院拡張を祝うとともに「ブラジルの医療市場は年々拡大し、現在世界8位で規模は約9億レアル。それを狙って米国などの大きな外国資本が、ブラジルの医療機関を次々と買収し、ブラジル国内でグループ化、利用者の囲い込みを図っている」とブラジル医療界の流れに言及。日系病院の理事長であることから「与儀援協会長と互いの病院経営に関して本格的な話し合いをしたことがなかった。これからは協力してブラジル医療界で生き残っていくための対策を話し合っていきたい」とした。
同病院は日本移民80周年を迎えた1988年に開院。昨年開院30周年を迎えた。
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11日に行われた、聖市の日伯友好病院新病棟建設の定礎式で、石川レナト・サンタクルス病院理事長が「米国の投資会社がパラナ州のサンタクルス病院を買収した」と語ると驚く人もいたが、すぐに「私が理事長を務める病院とは無関係だ」と補足して会場の笑いを誘った。とはいえ、現状の医療界の変革ぶりを聞くと油断できないかも。