奥原常嗣副会長による発表の後、今年9月から新しく理事会に参加した山室信工(まこと)エルベルト企画予算担当理事(58、二世)が、来年度の事業方針と予算案について発表した。
山室理事は「継続的な活動のためには、長期的な目線で計画を立てる必要がある」とし、10年後の文協「あるべき姿」の7項目を発表した。
これは(1)ブラジル社会への貢献を強化、(2)日系団体の一体化を促進、(3)社会福祉活動の強化、(4)新たなる日本文化の普及促進、(5)日伯交流窓口としての任務遂行、(6)青年達のリーダーシップ強化による持続可能性を達成、(7)日本政府が提唱する第五期科学技術基本計画の促進だ。
7項目を実現するために、財政改善と共に先行投資していく方針が挙げられた。山室理事は「スポンサー企業の増加、所有施設の収益増加、会員増加、イベントでの黒字会計を徹底し、全体的な収益を30万レアル増やす予定」と説明。
今まで行ってこなかった先行投資として人材強化、施設改修、主力事業の強化などが紹介された。それに伴い、経費削減も行っていく。
各イベントで経営計画や予算立てを行ってこなかった点にも言及し、「資金調達など財政面の仕事を行う部署を設け、やり方をシステム化させていきたい」と展望を語った。
それと共に、新規事業も積極的に行っていくと発表。今年の8月に奥原副会長主導で行われた「ソサエティ5・0」講演会のような今の日本を紹介するイベントも今後どんどん実施する。
今年10月、デカセギ子弟を対象に行った「ネットワーキング」のイベントでは、70人が参加し、日系企業代表も出席した。その結果、仕事がない2~3人の若者の仕事が決まったという。この活動は、今後も継続していく方針だ。
今年度会計の見込みは収入546万レアル、支出536万レアルで10万レアルの黒字。まとまった黒字になるのは久しぶり。来年度の予算は収入576万3千レアル、支出546万3千レアルで30万レアルの黒字を見込む。65周年事業の資金としては、15万レアルを計上している。
石川レナト会長は本紙の取材に対し、「文協は福祉団体なので儲かる必要はないが、活動にはお金がかかる。今回は経費削減を皆に意識してもらった」と回答した。
就任1年目となった今年の活動については、「日系社会が一体となるため、全伯を回り交流を深めた」と総括し、最も印象に残った行事として「『即位の礼』の行事と海外日系人大会で天皇皇后両陛下の前で演説したこと。とても感動的な出来事だった」と述べた。
□関連コラム□大耳小耳
ブラジル日本文化福祉協会の理事会に9月から新しく参加した、山室信工(まこと)エルベルト企画予算担当理事。石川レナト会長と共にNECブラジル社で働き、元NECブラジル社長、元NECラテンアメリカ副社長を務めた。石川会長が理事長を務めるサンタクルス病院の役員も兼任しており、信頼できる仲間を引き入れたようだ。山室理事によれば、「7月以降から赤字会計にならないよう努める他、若手の教育に力を入れて積極的に意見を取り入れている」のだとか。文協に足りなかった経営経験が豊富な人材として、奥原副社長と共に今後の活躍に期待したいところだ。