ペッタン、ペッタン――会館サロンに入ると、そんな音が景気よく響き、婦人部の皆さんが手際よく丸めていた。岩手県人会(千田曠暁会長)が誇る30年来の伝統行事『餅つき』の一場面だ。サンパウロ市の同会館で14日(土)午前9時から行われ、約30人が晩までに約100キロを搗いて丸めた。
「電話注文が多くて、昨日締め切りました。味見してみましたが、新米なので味もいいです」と千田会長はほくほく顔をうかべた。取材している最中も、レジストロ産の新米で搗いた白餅の注文品(500グラム入り)を取りに来る人が、次から次へと訪れていた。
丸める作業を手伝っていた大崎おきよさん(東京都八丈島、85)は「主人が岩手ですが、なぜか存命中は県人会に来たことなかった。3年前から手伝いに来ているけど、おしゃべりしながら皆で仕事をするのが楽しいの」と笑った。20歳で渡伯して、早65年。最初はレジストロに入植してお茶摘み、雑草取りなどを皆で一緒にやったという。「皆で仕事をするのが好きなの」。
岩手県北上出身の昆野トシコさん(84)は手を休めずに、取材に応じた。餅をくっつけないようにふる白い粉が顔についていたので、それをついチラッと見ると「おしろいみたいでしょ。餅つきしたらお化粧いらないのよ」と楽しそう。
さらに「ブラジルは良いわ。お化粧しなくていいし、髪の毛も染めなくても誰も文句言わない。高齢者はオニブス(バス)、メトロ(地下鉄)もタダ。これで泥棒がいなけりゃ最高なんだけどね!」と豪快に笑い飛ばした。
翌日は慰労会を兼ねた忘年会で、皆で一足先のお雑煮を食べながらゆっくり歓談した。
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