【既報関連】ボルソナロ大統領は25日、議会で承認されていた犯罪防止法案(パコッテ・アンチクリーメ)を、25カ所に拒否権を行使した上で裁可したと26日付現地各紙が報じた。
同法案はセルジオ・モロ法相が今年早々に提出したものだ。上下両院での審議の過程で、同法相の本意に沿わない変更も行われた。
「法相の本意に沿わない変更」の中には、「必要な項目が取り除かれる」、「あるべきではないものが加えられる」の両方があった。
モロ法相は、自分が望まないのに、議会が付け加えた項目「捜査開始を認める判事と、起訴を受け付け、判決を下す判事は別でなくてはならない」(ジュイース・デ・ガランチア・JDG)の拒否を望んでいたが、ほぼそのまま裁可された。
あるブラジル紙は、「ボルソナロ大統領はモロ法相からの要請の多くを無視した」とまで報じている。ブラジル司法官協会(AMB)と、政党ポデモスのリーダー、アルヴァロ・ジアス上議はJDGを無効にするため、最高裁に訴える構えだ。
JDGは、現在汚職疑惑に揺れる、ボルソナロ大統領の長男フラヴィオ・ボルソナロ上議の捜査に即刻影響する。
JDGは、“反モロ法相的条文”と言われており、これを拒否しなかったことで、「ラヴァ・ジャット作戦を率いた元地裁判事のモロ氏を法相に抜擢したボルソナロ大統領は、汚職に厳しい」と信じていた一部の大統領支持者からは不満の声が上がっている。25日には「#ボルソナロ裏切り者」の書き込みもツイッターを賑わせた。
また、「大統領はモロ法相だけでなく、ブラジル国民を裏切った」と強く批判した、あるユーチューバーの書き込みを、アブラアン・ウェイントラウビ教育相がコピーして拡散する一幕もあった。同教育相は後に「あれは間違い」と弁明し、削除している。
ボルソナロ大統領は25日の夜、「議会に全てノーと言い続けることも出来ない」と語り、「いくつかは拒否もした。批判は三権分立、議会と政府の役割の違いを理解しない人間の戯言」とも発言した。
犯罪防止法は、1月23日に正式公布となる。
大統領が行った拒否の中には、「使用制限のある武器を使った犯罪の重罰化」「インターネットを使った名誉毀損の厳罰化」などがある。
大統領側は、公共の利益を考え、また、合憲性を考慮した結果と説明しているが、大統領の拒否を議会が拒否する「拒否の拒否」の可能性もまだ残っている。