ブラジル各州は財政がひっ迫し、公社民営化、コンセッション(公共施設の運営権や営業権の民間移譲)、官民合同プロジェクト(PPP)を多数計画しており、その数は総計100以上に上ると、7日付現地紙が報じた。
民営化やコンセッションの対象とされている公社や資産は多岐に渡る。
発電所や送電会社、高速道路、空港といった、これまでも民営化されてきた分野から、展望台、港湾ドックやホテル、公的宿泊施設まで様々で、サッカー場、刑務所内の料理学校、動物園といったものまでが、州政府の売却、運営権移譲の対象になっている。
地元紙によると、22件の輸送交通部門の民営化がわかっている。この部門は、メトロ、バス、バスターミナル、鉄道、高速道路や港湾を含む。
これらは高額な投資がセットだ。例えば、サンパウロ州政府が8日に入札を行うピラシカーバ市~パノラマ市間の1200kmに及ぶ高速道路経営権の入札では、道路修繕やパーキングエリア整備などのため、30年間で140億レアル分の投資が落札企業に義務付けられる。
サンパウロ州政府は年内に、民営化やコンセッション、PPPの入札を21件行う予定だ。これら全ての計画によって見込まれる投資総額は400億レアルとされている。
インフラ部門に詳しい弁護士のフェルナンド・ヴェルナーリャ氏は、「ガス関連事業、上下水道整備事業は民間の興味をひくだろうが、民間が興味を示さない計画もいくつかあるだろう」としている。
地元紙がブラジル全土26州と連邦直轄区(DF、行政区分上は「州」扱い)に民営化問題に関する質問を行ったところ、12州とDFが数年以内に民営化を行う計画があるとした。
FHC政権(1995 ―02)で民営化計画を指揮した経済学者のエレナ・ランダウ氏は、「民営化で自治体に入る金額自体は、さほど大きなものではない。だが、公務員の給与が削減でき、これまでは行えなかった設備投資も民間企業の負担で行えることが利点」としている。
地元紙はランダウ氏に、「公社民営化へのイデオロギー的抵抗感が薄まっているのか」と質問した。「イデオロギー的抵抗感」とは、「公社で公的サービスの質も、雇用も守る。民営化を進めると、市場経済主義が国民生活を破壊する」という主張のことだ。
ランダウ氏は、「一向に進まない下水道設備や料金が高い割りに停電の多い電気事業など、公的サービスの質は悪く、国民の多くは公社がサービスの質を守るとは信じていない。国民は公社職員の高すぎる給与にも不満を抱いており、公社擁護の機運は確かに低くなった」と返答した。