【既報関連】米国とイランの間における緊張がいやます中、軍関係者に加えて農業界も、ボルソナロ大統領に対し、中東での緊張状態にかかわるのを避けることを望んでいると、8日付ブラジル国内紙が報じている。
ボルソナロ大統領は7日、イランと米国の緊張関係に関して、「わが国はこれまで通り、イランとの貿易を続ける」との発言を行った。
この件は、昨日付で報じた通り、3日にブラジル外務省が「米国のテロとの戦いを支援する」との発言を行ったのを受け、イラン駐在のブラジル大使館代表が5日にイラン政府に事情説明を求められたことで騒ぎが広がっていた。
大使代理として説明にあたったマリア・クリスチーナ・ロペス氏も、イランとの関係悪化をさけるため、イラン政府に対し、「あくまでテロとの戦いを強調したのであり、イランを批判したわけではない」と、強く主張した。
親トランプ派のボルソナロ氏が、今回の件で積極的に米国支持を行うことに踏み切れない要因の一つは、ブラジル軍が「国際紛争には関わらない」という伝統を持っていることだが、もう一つ、イランとの貿易関係という重大な要因がある。
ブラジルは中東諸国にとって世界最大の農産物供給国だ。それだけに、ブラジルの交易上の中東諸国の重要度は高く、中東への農産物輸出額は年間900億ドルに及ぶ。
その中でもイランは最大の得意先で、同国への輸出の97%は農産物が占めている。また、農産物輸出は年間22億5800万ドル、輸入は3992万ドルで、農産物だけで22億1800万ドルの収益をあげている。
農産物輸出で見ると、イランは中国、EU、米国、香港に次ぐ5番目の貿易相手国で、とうもろこしの輸出では世界一、大豆と肉類は各々、5番目となっている。
米軍が駐留する基地なども提供し、イランの要人殺害の現場ともなったイラクもブラジル産の農産物輸入国で、2018年は5億5千万ドルほどを輸出した。
ブラジルの貿易にとって、農産物は今や、国の輸出を最も支えるものとなっている。昨年の統計では鉄鉱石などの鉱物を上回っている。
トウモロコシ生産者協会のアリソン・パオリネリ会長や大豆生産者協会のバルトロメウ・ブラス会長も懸念を示す発言を行っている。
ボルソナロ大統領は7日、記者団から「米国支持を継続するか」と質問されたが、質問を無視して答えなかった。6日には「(米軍に殺害されたイランの)ソレイマニ氏は将軍ではなかった」との発言を行い、米国を支持したかのように思われていたが、国防省とも会談を行った後、発言に変化が出ている。
イラン軍は7日夜(現地時間の8日未明)、米軍兵とイラク兵がいるイラク国内の基地2カ所にミサイル攻撃を行った。使用されたミサイルは約20発で、被害は最小限に止まり、死傷者は出ていないが、国際的な緊張感は高まっている。