ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》太陽光発電パネルの設置奨励を継続=「太陽は非課税」と論点すりかえも=貧者から富者への逆社会保障?

《ブラジル》太陽光発電パネルの設置奨励を継続=「太陽は非課税」と論点すりかえも=貧者から富者への逆社会保障?

「発電パネルを設置できる富裕層、大企業優遇」との批判も出ているが(参考画像・Carla Ornelas/GOVBA)

 ボルソナロ大統領は7日、太陽光発電パネル設置者への優遇措置を継続させる方向で国家電力庁(Aneel)と合意したと発表した。7、8日付現地各紙・サイトが報じている。
 大統領は7日、Aneel理事のロドリゴ・リンピ・ナシメント氏と会談を行った後、太陽光発電の奨励継続と、太陽光発電への課税は行わないとの意向を表明した。Aneelは鉱動省の傘下機関だが、人事権などは独立しており、長官(現在はアンドレ・ペピトーネ氏)も理事会の合議で決まる。
 大統領は発表後、「太陽に課税することはないから、太陽は安心していてかまわない」と冗談めかして語った。ただし、最終決定権はAneelにあり、21日の理事会で判断される。
 レゴ・バロス大統領府広報官は、「大統領は太陽光への課税に反対しており、上下両院議長の支持も受けている。太陽光発電への非課税は、中小企業が同部門への投資を行うことを促進させる。ブラジル北東部は広範囲にわたって強い日照を受け、太陽光発電のためには有利な地域だ。これらの理由から、クリーンエネルギーの新たな供出源になる可能性を秘めている」と発表した。
 しかし、8日付現地紙は、「大統領の『太陽光発電は非課税』発言は大衆受けを狙ったもので、同時に発表された太陽光発電パネル設置者への優遇措置継続は、主に銀行や通信会社、大型チェーン店、農産物加工会社などの大規模企業を利する政策だ」と批判している。
 ブラジル経済省の試算では、個人、法人を問わず、太陽光発電パネル設置を奨励するための送電線使用料免除などの優遇措置により、消費者が負担する経費は2035年までに340億レアルに達する。
 優遇措置はクリーンエネルギーの発展のためだが、太陽光発電パネルと送配電システムを設置するためには、現在でも最低2万レアル程度の出費が必要で、電気代が将来的に安くなる分で元を取るには、30~63カ月かかる(地域による偏差あり)。
 ただこれも、Aneelが、「日照条件などが理想的だった場合」と想定して算出したもので、元を取るにはさらに時間がかかる可能性がある。
 ブラジル電力供給業者協会は7日、「太陽光発電奨励の恩恵を受けるのは60万の個人、法人で、そのための経費は2020~21年の2年間で総額25億レアルに及ぶ見込み」と発表した。
 それに対し、今年1年分の、低所得者層への電気代割引制度の公的負担は26億レアルだ。
 ブラジルの電気料金の40%は電力購入費で、少数派の太陽光発電者に低所得者への割引制度に匹敵する優遇措置を施すことは、「貧しい人へ回す金を高額なパネル設置費用を捻出できる大企業などに回すことで、逆社会保障政策に等しい」とリオ連邦大学のニヴァウデ・デ・カストロ教授は批判している。