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安永忠邦さんが白寿祝い=全伯から一族232人が参集=「ブラジルに生まれて良かった」

今年白寿を迎える忠邦さん

 “移民の父”上塚周平の晩年を知る安永忠邦さん(98、二世)の白寿の誕生日会が4日午前11時半から、忠邦さん宅で開催された。サンパウロ州プロミッソン市の上塚植民地の自宅農園で生まれ育ち、今もそこに住む。北はアマゾナス州マナウス、南はパラナ州マリンガなど全伯から集った親族を中心に、聖市から野口泰在サンパウロ日本国総領事や友人ら232人が出席した。日本からも娘の大山満智子さん(56、三世)と孫の逸美さん(25、千葉県)も駆けつけ祝福した(有馬亜季子記者)。

忠邦さんと子供ら

 安永家の初代ブラジル入植は1914年の3人。2014年に開催された移住100周年時には一族約410人を数え、子孫は全伯に広がって活躍中。その最長老が忠邦さんで3月に99歳になる。
 当日の午前11時から徐々に人が集まり始め、会場の入口に立った忠邦さんは、一人ひとりに握手し声をかけながら笑顔で歓迎した。親族は2日前から料理や会場の装飾などの準備を行ってきた。
 司会は長男の和教さん(74、三世)。まず先亡者、中でも昨年12月24日に亡くなった次男の修道さん(享年68)へ黙祷が捧げられた。
 日伯両国歌を斉唱後、「一月一日」を唱和した。忠邦さんをはじめ安永家では歌詞カードを見ずに歌い切る人が多かった。忠邦さんが教育勅語を暗唱。98歳でありながら淀みなく暗唱する姿に、感嘆の声が湧き上がり、親族の一部は感動で涙を流していた。
 親族三世代から祝辞を述べられ、子代表は三男の安永邦義さん(63、三世)=ブラジリア在住=で、「私達子どもは、父が繰り返し教えてきた教育勅語の大切さを学んだ。本当にありがとうございます」と父親への感謝を述べた。
 孫代表の逸美さんは、この日のために日本から20年ぶりに来伯した。「お祖父ちゃんは偉大。安永家の家族の強い絆はずっと引き継がれていく」と述べ、「お祖父ちゃん、いつまでも元気でいて」と祝福した。
 日本語で挨拶した曾孫代表の中里ルミさん(24、五世)は、「祖父が日本文化を守ってきたお陰で、五世の私も日本語ができる」と感謝を伝え、「お祖父ちゃんはいつも優しく、家族愛が深い。たくさんの教えをありがとう」と微笑んだ。
 ノロエステ日伯連合会の白石一資(かぞし)名誉会長、プロミッソン市長代理の吉田ダニエル氏も祝辞を述べ、野口泰総領事は「忠邦さんは日本文化や日本語の普及、家族を愛する教えを守ってきた」と敬意を表した。
 忠邦さんの末弟の安永ルイス(留意治)さんが「令和と兄・忠邦の99歳の誕生日を祝し、ビバ! サウージ! 乾杯!」と音頭を取り、忠邦さんも笑顔でグラスを掲げた。
 忠邦さんは本紙の取材に「今日は幸せですよ。これだけの人に来てもらえるなんて」と声を震わせ、「ブラジルで生まれて良かったです。ここでは何の不足もないですねぇ。食べ物だって美味しい」と幸せいっぱいの笑顔を見せた。
 忠邦さんは、1921年3月に良耕・セキ夫妻の下で11人兄弟の三番目に生まれた。一族には五世まで生まれているが、今も日本語を大切に継承している。


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 安永忠邦さんの白寿祝いには親族が大勢駆けつけた。忠邦さんの弟で四男の重郎さん(88、二世)は「兄は昔から大人しく優しかった。体を大事にしてほしい」と述べた。お隣リンス市在住の忠邦さんの妹の高木静香さん(92、二世)は、「いつも優しい兄さん。昔は体が弱くて、兵役に行ってもすぐに帰ってきた。でもそれ以来、病気しないで一番長生きなのよ」と笑った。
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 忠邦さんの白寿祝いのために日本から来伯した、末娘の大山満智子さんの娘・逸美さん(25、千葉県)は、「お祖父ちゃんと会うのは2007年に日本に来た時以来」と嬉しそう。幼い頃から母親に両親や兄弟の話を聞いており、日本で育ったが、親戚は旅行やデカセギに来た時によく泊まりに来るような身近な存在。20年ぶりにブラジルを訪れたことをとても喜び、「お祖父ちゃんにはもっと長生きしてほしい」と語った。