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南米最古級の修道院で初点=茶道裏千家が厳かに新趣向=千利休の頃からキリスト教と関係

グレゴリオ讃歌が流れる中で初点が行われた

新年会の様子

 茶道裏千家ブラジルセンター(林宗一代表)は「初点(はつだて)新年会」を12日(日)正午から、サンパウロ市セントロの歴史的な建物「サンベント修道院」で開催した。例年は市内の5つ星ホテルで開催して200人以上が出席できることが多かったが、今回はヴァデルソン宗智(そうち)さんが担当して修道院を会場に決めたため、会員中心に100人ほどに限定された。グレゴリオ賛美歌が流れる修道院で、厳かに抹茶をいただくという一風変わった趣向となった。

  ブラジル裏千家の林宗円さんは取材に対し、「戦国時代に『茶聖』と言われた千利休は、ポルトガル商人やキリスト教神父とも親交がありました。それで、茶道の基本所作である『帛紗(ふくさ)のさばき』は、神父が聖体拝領の時にキリストの血に見立てたワインを容れる器を拭く所作から来ているという説があります。キリスト教と茶道には深い繋がりがあるんです」と説明した。

 参加者はまず椅子に座って修道院の厳かな雰囲気を味わい、和菓子をつまんで、京都から直送された抹茶を点てたお茶をじっくりと味わった。

 お茶の会の後は新年会となり、林宗慶前代表は「14世紀にルイス・フロイスやジョアン・ロドリゲスといった宣教師は茶の湯に興味を持ち、克明に記録している。よくミサと点前が似ていると言われますが、教会とお茶室というのも魂の平安を得る空間という類似点があり、教会の中にもお茶の精神があるのではないでしょうか」と挨拶した。

 裏千家で長年稽古を積んでいるという国際交流基金サンパウロ日本文化センターの洲崎勝所長は「人生で20回ほど引っ越しし、うち海外はモスクワ、ニューヨーク、メキシコ、サンパウロと渡り歩いているが、どこにも裏千家の稽古場がある。ここが私の精神的な基盤」と語った。

 ブラジル生け花協会の元副会長の浦部和子さんは、「母が日本文化を大事にする人だったので、60年ほど前から裏千家に関わっている。毎年参加しているが、今日のようにスコールが降るのを見るのは初めて」と窓の外の豪雨に目をやった。

 食事のあと、景品が当たる福引きが行われ、グループ民の演奏を楽しんで散会し、来場者は修道院を案内された。

 エジソン修道士は「この建物自体は1912年に建てられたものだが、この場所は1598年から修道院として使われている。南米でも最も古い宗教施設の一つ。それ故に、法皇ベント16世がお泊りになった由緒ある場所です。せっかくの機会なので、じっくりと見ていってください」と導くと、一行は興味深いそうに従った。修道院では現在も40人ほどの修道士が修行生活をし、コレジオや単科大学としても活用されている。

 煎茶道静風流「灯楽会」ブラジル支部の清原エミリアさんは「私は二世ですが、この場所に入ったのは初めて。新年早々興味深い体験ができた」と関心した様子。娘の綾子パウラさんも「グレゴリオ聖歌が響く中でお茶をいただくのは素敵。裏千家はいつも新しい試みをしてくれる」と称賛した。

  

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 初点が行われたサンベント修道院の教会堂には、ブラジル最大級のパイプオルガンが設置されていることで有名。一行を案内したエジソン修道士によれば、聖体祭(Corpus Christi、6月20日)、死者の日(Finados、11月15日)、クリスマス(12月25日)には、パイプオルガンの伴奏によるパウリスターノ合唱団(Coral Paulistano)の演奏会が開催されているという。なお、同修道院では修道士によるグレゴリオ聖歌の讃美歌斉唱が、毎朝7時、日曜は午前10時から行われているとのこと。この聖歌は、7世紀初頭の教皇グレゴリウス1世にちなんでその当時に作られた欧州最古の音楽で、単調ながら耽美なメロディで「癒しの音楽」とも言われる。中世からルネッサンス期、ゴシック期の作曲家はもちろん、ベルリオーズ「幻想交響曲」やレスピーギ「ローマの松」などにもその旋律が借用されるなど現代にも影響を与えている。