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《ブラジル》ブルマジーニョの鉱滓ダム決壊事故から1年=地域や住民の苦しみは続く

重機類や警察犬も使って行われている遺体捜索の現場(Corpo de Bombeiros de Minas Gerais)

 【既報関連】19年1月25日に起きたミナス州ブルマジーニョでの鉱滓ダム決壊事故から丸1年。州検察は21日に、Vale社やTUV SUD社並びにその関係者16人を起訴したが、21~24日付現地紙サイトなどは連日、地域や地域住民は今も事故の後遺症に苦しんでいる事を伝えている。

 ブルマジーニョの事故では、遺体が見つかった犠牲者が259人、行方不明者が11人おり、現在も消防の捜索活動が続いている。死者の多くはVale社や外注会社の社員だったため、現在の捜索はダムのすぐ下にあった施設周辺が中心となっているようだ。

 この事故は、家族や友人、知人を失った人、負傷した人、生きていく術を失った人など、多くの人に一生消えない傷を残した。その事は、退院後も動きがままならない人や複数回の手術を繰り返し受けた人がいる事、自殺者や未遂者が増えた事、抗うつ剤や精神安定剤の使用量が増えた事などからも明らかだ。

 同市保健局によると、昨年中の抗うつ剤使用量は前年比で56%、精神安定剤使用量は同79%増えた。また、自殺者は1人が5人(市内在住者3人、地域住民2人)に増えた。自殺未遂者も29人から47人に増えたが、未遂者数はもっと多いはずだという。

 Vale社は事故で直撃された600世帯への医療支援を行っており、市役所へも3200万レアルの支援を行ってきたが、ケアが必要なのは地域の住民全てだという事を忘れている。

 環境面や経済面も癒しが必要なのに、届いていない分野だ。田畑が汚泥で覆われ、多数の遺体も見つかったという家庭では、緑が連なるべき場所に汚泥防止用の壁だけが見えている。水道水は怖くて使えず、毎週もらう60リットルの水で煮炊きしている家庭もある。

 大量の汚泥が流入したパラオペバ川は今も死んでおり、農業や漁業には使えない。ベロ・オリゾンテ大都市圏への水の供給も、新しい取水口や水処理施設が出来るまでは不可能だ。

 「かつては本当に平穏な場所だったが、現在は『平安』という言葉には程遠い」という住民達。国家鉱業庁は大雨が予想されている南東部や中西部にあるダムを所有する企業に警告を発したが、あの日の悪夢が繰り返されるような事はあってはならない。