【既報関連】「ボルソナロ大統領、外交におけるブラジル最高権威者として、厳しい状況に置かれた我々ブラジル人が必要としている祖国帰還をぜひ実現して!」――現地に足止めされているブラジル人たち約10人ほどが、そのようなメッセージを次々に語る約6分のメッセージ映像を2日付でユーチューブに投稿した。マスコミはそれを報道し、政府も2日、遅まきながらブラジル人帰還作戦を行うことを決めた。2月1~3日付ブラジル国内各紙・サイトが報じた。
中国湖北省武漢で発生し、世界中で脅威となった新型コロナウイルス。感染拡大を防ぐため、中国政府が都市ごと隔離している武漢では、同市に住む留学生ら、10人近いブラジル人が映像を撮影編集し、米国、イタリア、フランス、英国、日本などが行った救出作戦を列挙して、ブラジルも同様の措置を取るよう求めて公開した。
グローボテレビ局など、ブラジルのメディアが大々的に報じ、ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(民主党・DEM)は即座に、「この件に関し、議会は連邦政府に対して無制限の支持を約束する」とコメントを出した。それを受け、当初は高額な経費や法律上の問題などを盾にしぶっていた連邦政府も応じざるを得なくなった。
こうした伝染病感染の疑いがある人への強制検査や、陽性と出た場合の強制隔離などの法的根拠を定めた暫定令(MP)を、政府は再開直後の連邦議会に提出する予定だ。
先週まで、ボルソナロ大統領は中国からのブラジル人救出に及び腰だった。帰還者に感染者がいたら、国内で感染が拡がる危険性がある上、帰還者を検査期間中隔離することを正当化する法令がなかったからだ。
3日午後5時のブラジル保健省発表では、現在国内では14人が感染の疑いで検査を受けているが、感染が確認された人は1人もいない。
エルネスト・アラウージョ外相はブラジル紙に「ブラジル人救出の可能性は常に検討されており、方針が変わったわけではない」と語った。空軍機より多くの人を乗せられ、飛行距離も長い商用機をチャーターすることが有力視されているが、作戦がいつ実行され、経費はどれくらいになるかは決定されていない。
ブラジル政府は経由が1回で住むように、連続15時間以上の飛行が可能な機体を使用したい意向だ。既にある国が機体の経由地として空港利用を容認すると申し出たが、どこかは明らかにされていない。
2日までの段階で、中国でコロナウイルス感染が確認されたブラジル人はいない。感染者は帰国便には搭乗できない。「政府が娘を戻してくれる方針と聞いて、安心した」と語るのは武漢で立ち往生しているインジラ・サントスさん(34)の父、ルーベンス・サントスさん(59)だ。
帰還者たちは21日間、軍事施設に収容される。潜伏期間も想定した上で、感染しているかしないかを見極めるための時間だ。
3日午前にはオニキス・ロレンゾーニ官房長官が、中国からの帰還者は、サンタカタリーナ州フロリアノポリス市、もしくはゴイアス州アナポリス市、北東部のどこかで隔離されるだろうと語った。