ブラジル沖縄県人移民研究塾(宮城あきら塾長)が発行する同人誌『群星(むりぶし)』第5巻の感想を言い合う「合評会」が1日午後2時から、サンパウロ市の沖縄県人会本部で開催され、約70人が熱く批評し合った。当日はサントス強制退去事件に関するドキュメンタリー番組『語られなかった強制退去事件』(NHKワールドプレミアム1月3日放送)の鑑賞会も合わせて開催された。
宮城塾長は冒頭「移民群像を掘り起こして後世に伝えたいという想いで、語られてこなかった歴史や貴重な経験を聞いて歩いて、あっという間に5巻まで出た。中でもサントス強制退去事件の掘り起こしは3号から始め、大きな反響を呼び、NHKドキュメンタリーでも我々の調査の様子が扱われた」としみじみ振りかえった。
「第1部」としてNHK同番組が上映され、登場人物の佐久間正勝ロベルトさんも最前列に座って一緒に見た。知り合いが次々に登場して、今まで語られなかった辛い事件をありのままに証言する様子に、皆が固唾を飲んで画面に食い入るように見入った。生々しい証言に驚いて「ノッサ!」と驚き声をあげる人もあちこちにおり、共感をこめた拍手が沸き上がった。
上映後、来場者の戦後移民・国吉美津子さん(80、沖縄県)に感想を聞くと、「私は5歳で沖縄戦を体験して苦労したが、ブラジルに居た方も同じ様に苦労されたということが良く分かった」と語った。
そして首里城の歴史と意義をポルトガル語で説明するビデオが上映され、再建募金運動への協力が呼びかけられた。
次に第2部、5巻への提言の時間になり、高良アレシャンドレ元大学教授が「沖縄系共同体だけでなく、大学生や研究者、一般人で沖縄文化に興味のある人が手に取りやすくなるように広く流通させた方がよい。そのためにはISBN(国際標準図書番号)やCIP(ブラジル図書コード)を取得する必要がある」と提言した。
金城エジソン・ケンジさんも「この本をポルトガル系三世やギリシア移民にも見せたら、読んで感動していた。移民の体験は民族を超えて共感を得る。1万部作るとか、電子書籍化しても良いのでは」と提言。新里テツオさんは「この本は沖縄系共同体の宝であると同時に、一般社会でも読まれるべきもの。日本語部分にはルビをつけてほしい」と要望した。
コレジオ・ブラジリアの創立者・久場綾子さんは「父の話を5巻に取り上げてもらって本当にありがたい。父の教育重視の思想が私に受け継がれてコレジオとなり、今は息子の代になった。父は50年以上前に死んだが、今もその想いは生きている」と語った。
奥原マリオさんからも、サントス強制退去への謝罪請求文書を昨年末にブラジリアへ提出した件の報告があり、「沖縄県人会が動いたから連邦政府も本気で受け止めてくれた。サントス事件の二の舞が起きないよう、後世まで語り継がれなければ」と訴えた。
最後に山城勇氏が「乾杯、カリー、ビーバ・ウチナンチュー!」と音頭をとり、持ち寄りの品々を食べ、第3部「沖縄の心を歌う」では国吉隆治さん(三世)と知念雄二さん(三世)による歌と三線、空手演舞が披露され、最後はカチャーシーで賑やかに閉幕した。
□大耳小耳□
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『群星』第5巻合評会には、本紙寄稿者・毛利律子さんも参加し、「島袋栄喜前会長の『群星には“身近な英雄”が描かれている』という言葉に共感を覚える。学術論文よりも、個人の体験談は胸に迫る。サントス強制退去の話も、これに出るまで知らなかった。今の若い人は携帯ばかり見ているが、群星の表紙にあるような星空を見上げて歴史に思いを馳せてほしい」と鋭いコメントを発していた。なお第5巻は沖縄県人会(Rua Dr. Tomas de Lima, 72)や本紙編集部で無料配布中。問合せは、沖縄県人会本部(11・3106・8823)まで。