ホーム | コラム | 樹海 | 22年大統領選のカギを握る男

22年大統領選のカギを握る男

フラヴィオ・ジノ氏(Agencia Brasil)

 米国では今、大統領選の予備選が3日のアイオワ州を皮切りにはじまり、そろそろ本格的な盛り上がりを見せはじめている。とりわけ、野党・民主党にとっては誰がトランプ氏の対抗馬になるのかを決める意味で非常に重要な意味を持つ。

 ブラジルでの大統領選は2022年。ボルソナロ政権は昨年はじまったばかりなので、次の選挙のことより、今の政権での結果を期待したいところだ。だが、そんな現在でも、明らかに時期尚早ながらも、22年大統領選に関しての報道が数は少ないが出ており、様々な憶測が飛び交っている。

 今回は、そんな中から特に気になる、新たな「台風の目」とでも言うべき存在が浮上してきているので紹介しようと思う。それはセルジオ・モロ法相でも、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事でも、ルーラ元大統領でも前回2位のフェルナンド・ハダジ氏でも、司会者のルシアノ・フッキ氏とも異なる人物だ。

 その人物とは、フラヴィオ・ジノ氏。現在、マラニョン州の二期目の任期をつとめる知事で、所属政党はブラジル共産党(PC do B)だ。

 同氏が注目されるようになったきっかけは、ボルソナロ大統領との舌戦だった。北東部はのきなみルーラ氏やハダジ氏の労働者党(PT)のため、ボルソナロ氏はたびたび批判の対象にしているが、ジノ氏はそんな北東部の知事たちのリーダー的存在をつとめ、一歩も引くことなく、痛烈な言い返しを続けているうちにマスコミや国民の注目を集めている。

 ジノ氏はマラニョン州知事としての手腕でも絶大な人気があり、州民の満足度が70%を超えていることでも知られている。マラニョン州内では、圧倒的な影響力を誇ったサルネイ元大統領一族の数十年に及ぶ長期支配を終わらせた人物として英雄視もされているようだ。

 また、経歴も変わっている。2006年までは連邦判事で政治家経験がなく、39歳の2007年の時にマラニョン州州議員となり、2010年のマラニョン州知事選でロゼアネ・サルネイ氏に敗れた。だが、その約半年後に、ときのジウマ大統領の抜擢で、ブラジル観光公社(エンブラトゥル)の会長となり、2014年までつとめた。そして2015年からマラニョン州知事となり、現在も51歳とまだ若い。

 この「北東部の反ボルソナロ勢力のリーダー」としてジノ氏の人気は左派系国民の間で上昇中で、22年大統領選の出馬を望む人も少なくない。

 現状、望まれているのは、ルーラ氏、またはハダジ氏とのシャッパだが、PT関係者からは「ジノ氏の正候補もありえない話ではない」という声もあがっているほどだ。

 そんなジノ氏に食指を伸ばしているもう一つの勢力がある。それがルシアノ・フッキ氏だ。現在、ネットでの人気がボルソナロ氏を超えはじめ、かねてから囁かれていた大統領選出馬が現実味を帯びてきている同氏だが、ジノ氏との交渉を希望しており、ジノ氏も「話は聞く」と拒否の姿勢を見せていない。

 これまでフッキ氏と言えば、民主社会党(PSDB)が獲得に動くなど、中道、それもむしろ保守寄りなイメージがあったため、この動きは意外なものとして受け止められた。だが、同氏のような人気候補でも、「対ボルソナロ」のイメージ作りのため、ジノ氏の存在は欠かせなくなっているようだ。

 まだ先は長いが、「カギを握る人物」が増える大統領選は面白いものだ。(陽)