サンパウロ州軍警第1大隊所属のエリート部隊、トビアス・デ・アギアル巡回機動隊(ROTA)と抗争状態になって殺害された犯罪者や犯罪組織構成員、または犯罪容疑者の数が、2018年の51人から101人へとほぼ倍増したことが分かった。7日付現地紙が報じた。
2019年のデータを公表したサンパウロ州警察オンブズマンのベネジド・マリアーノ氏によると、ROTAによる犯罪者の殺害増加は、警察官による殺害が増えた主要因の一つだという。
サンパウロ州警察オンブズマンは、警察への苦情を受け付け、行動を監視する役割も持つ独立組織だ。
18年から19年にかけて、サンパウロ州軍警が、犯罪者との銃撃戦の末、または、逃走犯追跡中などに相手を殺した人数は、642人から716人へと11・5%増えた。伸び幅は、実数で74人だ。その中でROTAが殺害した人数は、実数で50人増えている。
マリアーノ氏は、「ROTAだけで50人も増えなければ、増加率も低く抑えられただろう。ROTAは軍警のエリートとの自負があり、1980年代にリオ州の警部が選挙キャンペーンで使って以来、社会通念ともなった『良い犯罪者とは死んだ犯罪者』という考え方に影響されやすい。また、サンパウロ州やブラジルを覆っている保守的な考え方も警官による殺人増加に影響している」と語った。
ジョアン・ドリア同州知事は、「犯罪には厳しく対処すべし。追跡中、銃撃戦の最中に殺害するのもやむなし」の方針だ。昨年9月には、「警察官の手による殺人を減らすことは義務ではない」とまで発言した。
ただし、地元紙がサンパウロ州保安局に問い合わせると、「州としては、警察官が安易に殺害することを減らすように努力している。昨年は23万人以上が逮捕、拘留された。716人はその0・3%だ」と返答した。
オンブズマンが公開したデータによると、大隊別で最も殺害が多いのが第1大隊で、その次がサントス市周辺を担当する第2大隊(30人)、3位がサンパウロ市東部を担当の第28大隊(22人)だ。
サンパウロ州人権保護審議会のジミトリ・サレス会長は、軍警と地域市民がお互いの顔を知っているような、心の通った関係を築いていくように心がければ、警察官による無為な殺害は減らせるはずと語る。
また、予備役軍警で元国家治安局長のジョゼ・ヴィセンテ・ダ・シウヴァ氏は、「犯罪者を手にかけるのは、本当に止むを得ない時に限られるべき。警察官による殺人が多いことは心配」としたが、「ROTAはいつも、警察と犯罪集団の武力的衝突が最も発生しやすいところ、犯罪者たちが武装しているところに派遣されるという事実も忘れてはならない」とも述べた。