「ブラジルはW杯でマナウス、レシフェ、にも行ったことがある。マナウスはアマゾンを探検しましたよ。楽しかった」。サッカー日本代表の専属シェフ、別名「サムライブルーの料理人」のにしよし西芳てる照さん(58、福島県)は、そう言って懐かしそうに笑顔を浮かべた。
福島県庁による「令和元年度中南米・北米移住者子弟研修」で、研修生がホームステイ中の1月25日に訪れた福島県観光物産館で偶然取材した。西さんは、この日に同館で開催中の相双地方観光物産展「そうそう美食フェア」で料理を振る舞うために来ていた。
西さんが話した2014年サッカーW杯は、開催国ブラジルにとっては悪夢のような大会だった。「当然優勝」との期待を背負って4位に終わったのみならず、ドイツに7対1で負けた。今でもサッカー界にはそのトラウマが残っているほどだ。
あのとき、西さんはサッカー日本代専属表シェフとしてチームと一緒に来ていたわけだ。
その際に、「せっかくブラジルに来ているから」と選手にフェイジョアーダを作って出したこともあるそう。大会中の選手は勝手にレストランへ食べに行けず、専属シェフが作ったものしか食べられない。「だから結構日本の選手に喜ばれたんですよ」と思い出す。他にも「ジーコや兄のエドゥアルドにもブラジル料理を作った」と代表専属のシェフならではのエピソードを話す。
元々は、同研修生一行が訪問した日本初のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」で、震災前まで総料理長を務めていた。
被災後は、原発事故対応の最前線基地となったJヴィレッジで作業員のために料理を振る舞った。Jヴィレッジ再開後は、料理の監修やメニュー開発に従事する傍ら、クラブハウス「いわきFCパーク」で『ニシズキッチン』を出店している。
そんな西さんに福島のオススメ料理を聞くと、「ここの食材は日本一だから、オススメはたくさんある。海なら鮃や鯖、山なら山菜、それからフルーツも全てが美味しい。今はもう普通に暮らせていて良い場所です。ぜひブラジルの人も来てください」と頷き微笑んだ。
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福島県観光物産館で出会ったサッカー日本代表専属シェフとして活躍している西芳照さんに、当地の日本食について印象を聞くと、「昔ながらの日本料理が多い感じかな」と語る。「昔来た日本人の料理を継承しているだろうから、懐かしい料理ですよね」とのこと。確かに、当地に訪れた日本人は「“明治の日本”が残っている」と言われるので、言い得て妙かも。