セルジオ・モロ法相が27日、ボルソナロ大統領を批判するパンクロックのイベントに対して取調べがなされたことを肯定する発言を行い、強い違和感や批判を招いている。
事の発端は、パラー州ベレンで行われているパンクロックのイベント「ファカーダ・フェスト」で、出演バンドとイベンターが地元の警察から取調べを受けた。この件では既に、ネット上で「検閲行為だ」と反論する声があがっていた。
このイベント名にある「ファカーダ」とは、ボルソナロ大統領が2018年の大統領選のキャンペーン期間中に暴漢に胸をナイフで刺された事件のことをさしている。さらに、同イベントの告知ポスターにはかねてから、「公害物質を口から吐いて環境破壊を行うボルソナロ氏」「ヒトラー風の髭を生やしたボルソナロ氏」などのイラストが使われていた。
この件に関して、モロ氏はツイッター上で、「大統領であれ、一般市民であれ、誰かが串刺しにされたり、ナイフで刺されたりする表現を使ったポスターなどの表現は許されるべきではない」とし、今回の命令を出したのは自分ではないとしながらも、「自分でも取り調べ命令は出しただろう」との発言を行った。
すると、ツイッター上では、「では、なぜ、反議会、反最高裁という、民主主義を危ぶむデモには反対の声をあげないのだ」「右翼が(労働者党政権時代の大統領の)ルーラやジウマが首を吊られたり、(女性である)ジウマに性差別的行為を行ったりする写真や絵を使っても取り調べもしないくせに」などの反論の声が多くあがった。
モロ法相は2014年から18年にかけて、ブラジル政界史上最大の汚職摘発計画の「ラヴァ・ジャット作戦」担当判事として、政治家に厳しい裁きを行ったことで人気があり、現在も、「もし大統領選に出馬すれば票を入れる」という国民は多い。
だが、保守性の強さで知られる南部パラナ州の出身で、家族ぐるみで保守系政党とのつながりが強い上、ラヴァ・ジャット作戦では、保守系政党の政治家を裁かなかった一方、ルーラ元大統領には実刑判決を下したことから、かねてから左派系の人たちからは反感が強い。さらに、同氏が、女性や黒人、先住民、LGBTへの差別発言で有名だったボルソナロ氏の法相になったことや、携帯電話の盗聴記録で判事時代の素顔があかされたことなどで、その反感が強まっていた。
ボルソナロ氏の刺傷事件も、左派系国民の間では、「同情票で当選するための狂言」と信じる人たちが少なくない。また、実行犯が犯行の2カ月前に居住地から遠く離れたサンタカタリーナ州で射撃練習をしていた日、同じ練習場の敷地内に、同じく同地には何のゆかりもない大統領次男のカルロス氏がいた記録があったなどの疑惑も、かねてからささやかれている。
パンクロックはただでさえ、反政府的な反逆的な歌詞の内容で知られるが、先週末から今週にかけて行われたサンパウロ市やリオ市のカーニバルのパレードなどでも、ボルソナロ氏は続々と批判の対象にされていた。(27日付フォーリャ紙電子版より)