アメリカでは3日、3月の第1週の火曜日に、大統領選の年に4年に1度の「スーパーチューズデイ」が行なわれ、14州で予備選が行なわれた。その結果、民主党の大統領候補争いでは、それまでの予備選で劣勢だったジョー・バイデン氏が、9州で勝利し、それまで優勢だったバーニー・サンダース氏を逆転している。
今回のスーパーチューズデイの場合、ブラジル的には、ボルソナロ大統領支持者の場合は、同氏の敬愛する共和党の現職、トランプ氏一択であろうから関心は高くないかもしれない。だが、そうでない人にとっては、やはりかなり関心は高く、多くの報道がなされている。
ブラジルのジャーナリストに関して、今回のスーパーチューズデイに関する発言を見ていると、サンダース氏を支持する文章をよく目にする。アメリカでは「極左」と呼ばれ、強い拒否反応を示す人が民主党本部にさえ少なからず存在する同氏。ブラジルはアメリカの民主党よりも遥かに左寄りの労働者党(PT)、ならびにPT政権の時代にベネズエラのチャベス氏の影響下に数多く生まれた中南米の左派ポピュリズムの時代を体験している。サンダース氏への理解は、アメリカ人よりもむしろ強いはずだ。
そうした事情もあるのだろう。今回のスーパーチューズデイではサンダース氏は南米系の国民が多い州での勝利が目立っていた。
もっともサンダース氏の場合、「国民皆保険」や「大麻解禁」など、ルーラ、ジウマ政権のブラジルでさえ、実現しようとさえしなかった、南米人基準でさえも斜め上を行くような公約を掲げているのであるが。
ただ、選挙前は好き放題に考える国民でも、いざ投票が近づくと現実的なところに立ち返るからなのか、今回の投票では、「ここぞ」の踏ん張りどころでのバイデン氏の奮闘が目立った。中道穏健派の他の候補たちの多くが、自身の出馬を捨てバイデン氏の推薦に回った援護射撃も利いたのだろう。
ただ、コラム子にはそれ以上に、バイデン氏の「オバマ政権時代の副大統領」という肩書きが利いたように思う。バイデン氏は今回、南部の州で他をよせつけない圧倒的な強さを見せ付けたが、その一帯はアメリカ全土で最も黒人人口の多い地域。「黒人社会で最も尊敬されている人物」、オバマ氏の依然として根強い影響力を思い知らされる結果だったように思う。
この「オバマ・イメージ」に関して言えば、黒人人口の多いブラジルもウェルカムのような気がコラム子にはする。とりわけ、その比重が高い北東部の人にとってはサンダース氏よりも親しみやすいのではないだろうか。
ただ、「民主党候補者たちの南米への距離感」でいうと、それはサンダース氏が以前から圧倒的に近かった。それは同氏が前回、2016年に大統領選に出馬したときからそうで、ジウマ政権の崩壊をいち早く批判。昨年の11月には、宗教と結びつき半ばカルト化した極右国民がエヴォ・モラレス前大統領の関係者や彼を支持する先住民たちに暴力的な人権侵害行為で威嚇を行なったことが報じられたボリビアの大統領選に関し、これを「クーデター」と呼んで批判した、結局、10数人の民主党での出馬者から2人しか出なかったうちの一人もサンダース氏だった。
サンダース氏でもバイデン氏でも、どちらの候補が民主党の候補になってもブラジルの受けは悪くないように思うが、当のボルソナロ氏にとっては、もし仮にこの2人のうちのどちらかが大統領になったとしても、面白くないに違いない。(陽)