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地球の反対側から世界目指す!=元ジャニーズJr.岡本カウアン=ブラジル人気番組でデビューへ

14日に放送される「プログラマ・ラウル・ジル」に出演した際の写真

 「You、僕本物のジャニーだよ!」――2012年2月12日、携帯に突然かかってきたジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏(故人)からの電話は、デカセギ子弟で日系四世の岡本カウアン(23、愛知県出身)の人生を変えた。日本の芸能界で最大手の事務所に入所し、歌もダンスも経験ゼロの状態から猛レッスンを重ねて、芸能界の父、ジャニー氏の下で才能を開花させてきた。それから8年―両親の故郷であるブラジルへ単身で渡ったカウアンは、14日(土)に人気番組「プログラマ・ラウル・ジル」に出演する。

 「ジャニーさんから初めて電話がかかってきた時、友達のいたずらだと思って一度切っちゃったんですよ」。6日に来社したカウアンは、ジャニー氏との思い出を振り返って笑った。当時は14歳、日系ブラジル人が多い愛知県豊橋市に住んでいた。
 日系ブラジル人ハーフの両親から生まれたカウアンは、外では日本語、家庭ではポルトガル語を話すバイリンガル環境で育った。幼少期は外国人顔でスポーツも出来たために、同級生からのイジメを受けていたが、「負けたくない」と立ち向かっていく勝ち気な子供だった。
 そんな環境下で徐々に生活が荒んでいき、不登校となり、悪い仲間と付き合うようになった。「親からは『良い教育を受けて、自分達のような工場労働者になってほしくない』と繰り返し言われた。でも勉強は苦手だったし…自分の状況に病んでいった」と当時を思い出して俯く。
 その頃にTVでジャスティン・ビーバー等の人気歌手を知り、自分の境遇と似ている事に気づき、「自分もこうなりたい」と芸能界入りを志すようになった。14歳の時、偶然知り合ったジャニーズ事務所関係者に手紙と自分が歌う様子を撮影したDVDを渡した3カ月後、冒頭の電話がジャニー氏本人からかかってきた。

5千人の大舞台で突然歌うことに

 その電話で「You、今から国際フォーラム(東京都)まで来てくれない?」と要請されたカウアンは、チャンスを逃すまいと、初めて乗る新幹線で東京へ。アイドルグループ「Sexy Zone」のデビューコンサート(約5千人)へ呼ばれ、一度もステージで歌ったことがないカウアンがその大舞台で、ジャニー氏に言われるがままにぶっつけ本番でジャスティン・ビーバーの「Baby」を披露した。

 ジャニー氏に気に入られて家にも呼ばれ、TV、舞台、コンサート、ドラマと数々の番組にも挑戦した。その間、まったくのド素人だったので、死にものぐるいで猛特訓した。当時の同期で、現在はKing&Prince(キングアンドプリンス)のセンターとして活躍している平野紫耀(ひらのしょう)と共に、ジャニーズJr.の中でも目立った存在になり、将来を期待されていた。
 しかし次第に「もっとアーティストとして活動したい」という思いが強くなり、ジャニーズでアイドルを続けることに違和感を覚え始めた。「自分で歌詞を書いて、日伯のアイデンティティをもっと出して世界で活躍したい」。居ても立ってもいられずに曲を作り、ジャニー氏に日本語、英語、ポルトガル語の三カ国語で収録したDVDと自分の思いを綴った英文の手紙を渡し、当時同事務所では認められてなかったYoutube展開を提案したという。

事務所を辞め、ブラジルから世界を目指す

 カウアンによれば、「ジャニーさんは賛成してくれ、『事務所で会議にかける』と言ってくれた。でも結局ダメ」という。その後「Youは世界に行ける。自分の人生だから自分で決めたら良いよ」とのジャニー氏の言葉に背中を押され、事務所を退所。クラウドファンディングなどで資金を集めて19年12月に渡伯した。バイリンガルといえども、日本で生まれ育ったカウアンにとっては「見知らぬ祖国」だ。
 「ブラジルでも手応えを感じている。東京五輪がある今年、もしくは来年に、ブラジルと日本でのソロデビューを飾りたい」と意気込み、先月はリオ祭りに出演。人脈を駆使して、世界で活躍する歌手になる夢を叶えようと孤軍奮闘中だ。

番組内で歌を披露したカウアンさん

 そんなカウアンのブラジル・デビューの第一歩が、14日午後4時半~午後7時45分に放送される「プログラマ・ラウル・ジル」(https://www.sbt.com.br/auditorio/raul-gil#fique-por-dentro)への出演だ。収録を終えた後に来社し、今回の取材に応じた。
 4月には日本でライブを控えている。元ジャニーズJr.という異色の経歴を持つ日系四世の挑戦は、これからが本番だ。


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 元ジャニーズJr.という異色の経歴を持つ日系四世、岡本カウアンは、父親、母親共にハーフの日系人だ。カウアン父方の岡本家は、第一次世界大戦後の1923年に鳥取県八頭郡智頭町(ちづちょう)から移住した戦前移民だ。母方の佐藤家も戦前の1934年に福島県田村郡龍根町(たきねまち)から移住しており、当地でも古い日本移民の子孫といえる。戦前移民の開拓精神が、カウアンを前例のない挑戦に向かわせているのかも?今後にぜひ期待したいところ。