25日夜、ボルソナロ大統領が政見放送を行い、新型コロナウイルスの感染拡大抑制のために州知事たちが実践している外出自粛処置(クアレンテーナ)を批判し、「学校を再開して経済活動に戻るべきだ」と主張。これをめぐり、国民や政界からは強い反発が起こり、大きな波紋を投げかけている。25日付現地紙が報じている。
ボルソナロ大統領はこの放送の中で、「ウイルスはやってきたが、いずれ去る。雇用が保たれ、家族の生活(生計)も守られなければならない。一握りの知事や市長たちが交通機関を止め、商店の閉鎖、大量隔離を進めている」と語り、自治体の長たちを批判した。
週末に発表されたダッタフォーリャの世論調査では、知事たちの行っているクアレンテーナの政策は50%以上の支持を得ているのに対し、大統領の意向は30%ほどの支持しか得ていない。
また、大統領は「犠牲になっているのはほとんどが60歳以上で、40歳以下の死者はごくわずかなのに、どうして学校を閉鎖する意味があるんだ」と語った。
だが、ブラジルでも50歳以下の死者が出ており、世界保健機関(WHO)も「子供や青年もかなりの数が犠牲になりうる」と警鐘を鳴らしている。
さらに、ボルソナロ氏は「コロナウイルス感染者の90%は無症状で、グリペジーニャ(軽い風邪)に過ぎないものだ。だが、マスコミが重病であるかのように煽っている」と、以前からの持論を繰り返した上、「イタリアで死者が続出しているのは、あの国が高齢化問題を抱えているからだ」と結論付けた。
この放送が終わるやいなや、マスコミや国民、政界は大統領の見解を批判しはじめた。
グローボ局の夜のニュース「ジョルナル・ナシオナル」のキャスター、ウィリアム・ボーネルは生放送で、「大統領の発言は、ウイルスの拡散を食い止めようと努力している医療・衛生部門の専門家や自治体の長たちの意向に反し、その努力を台無しにしている」と批判した。
国民も不満を抑えることができず、20日から連日続いている大統領への鍋叩きの抗議(パネラッソ)がこの日も行われた。ツイッター上でも、「フォーラ(辞めろ)、ボルソナロ」など、大統領の辞任や罷免を求めるハッシュタグが数時間で20万個以上あがり、世界でも最も話題にされた事柄となった。
さらに政界でも、コロナに感染して隔離中のダヴィ・アルコルンブレ上院議長が、「これはあまりに深刻だ。この国には人々の生活や健康に責任を持つリーダーが必要だ」と、ボルソナロ氏の手腕を強く疑問視した。
また、州知事たちからも批判が続出。エスピリトサント州のレナト・カーザグランデ知事は、「マンデッタ保健相はこのまま大臣職に留まれるのか」と、コロナ対策を高評価され、国民の人気も高まっている保健相の行方を案じている。