【既報関連】ボルソナロ大統領が24日の政見放送で「新型コロナウイルス流行に伴う外出自粛令(クアレンテーナ)」を批判したことに知事たちが一斉に反発し、現行対策を継続する意向を強く示している。一方、従来はウイルス感染者や感染が疑われる人に対して積極的な隔離を呼びかけ、好評を得ていたエンリケ・マンデッタ保健相の発言が大統領寄りに変化するなど、見逃せない動きも出ていると、25、26日付現地紙、サイトが報じている。
24日の政見放送に対する知事たちの不満は、25日に早速爆発した。ボルソナロ大統領はこの日、ブラジリアで、南東部の知事たちとコロナ対策に関するネットでの会合を行ったが、大統領はそこで、サンパウロ州のジョアン・ドリア・知事(民主社会党・PSDB)と激しい言い争いを行った。
ドリア知事は大統領に対し、「対話なしでは、国民の健康の危機に打ち勝つことはできない。多くの国民は昨日の放送に失望している。大統領なら国民に見本を示すべきだった。今は国を二分するべき時ではない」として、国民の大半が支持している、クアレンテーナをはじめとする知事たちの対策を批判した大統領をいさめ、「コロナ対策と経済とのバランスなら大丈夫」と念を押した。 だが、ボルソナロ氏は「君がめちゃくちゃなことをしなければな。隔離から出てこい」と挑発した。この会合への参加者によると、大統領はドリア知事を「レヴィアーノ(愚か者)」「デマゴーゴ(嘘つき)」と罵倒。さらに、18年のサンパウロ州知事選で、ドリア氏が「ボウソドリア」と称してボルソナロ氏の支持者に自身への投票を呼びかけたことを皮肉り、「みんな、そうやって裏切っていくのだ」と語ったという。
他方、ゴイアス州のロナウド・カイアード知事(民主党・DEM)も同日、「あの男とは絶交する。指図は受けない」とし、同州の非常事態宣言を撤回する意思がないことを明らかにした。カイアード氏は極右政治家の大物で、ボルソナロ氏の支持者としても知られていたが、医師でもあった経験から、大統領のコロナ観やその対策を以前から批判していた。
これらの例を始め、25日の内に、26州と連邦直轄区の知事27人の内、19人の知事が大統領を批判。ロライマ州とロンドニア州以外は、クアレンテーナを継続する意向を表明している。
クアレンテーナ支持は知事のみではなく、アミウトン・モウロン副大統領も、「連邦政府としては、隔離は唯一の解決法」と発言。陸軍のエジソン・レアル・プジョル司令官も、「コロナ対策は、現在、我々の軍が直面している最大の課題の一つ」として、ことの重要性を訴えている。
だが、マンデッタ保健相は25日の定例記者会見で、「クアレンテーナは早すぎた」「お茶や鶏がらのスープを飲むことを勧める」と、これまでの医学、科学的な見地とかけ離れた発言を行っており、「大統領からの圧力がかかりはじめたか」との囁きが出はじめた。