カーニバル直前、ブラジリアの日本国大使館の岡本洋幸医務官らが連名で「来週から始まるカーニバルには大量の外国人観光客が押し寄せる。それに混ざって感染者がやってくる可能性が指摘されている。しかもブラジルはカーニバル後から徐々に冬の時期になる。アジアでは3月以降に沈静化したとしても、季節が逆の南米ではそれから感染時期に入るので注意が必要」との警告を送ってきたので、本紙2月18日付で掲載した。
実際にカーニバル期間前後にイタリアに旅行へ行った人から最初の感染者が見つかり、今のようにパンデミック状態になった。今回はその岡本さんと、新型肺炎の日本国内の患者治療を実際に行っており、ダイヤモンドプリンセス号の対応などでも活躍した国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長が、連名で次の投稿を寄せた。(編集部)
3月10日、11日、ブラジリアで汎米保健機構(PAHO)の新型コロナウィルス対策会議が行われた。ブラジル保健省、スペイン、アメリカ、中国の参加もあった。
内容は、7番目のコロナウィルスCOVID―19について、妊娠中の患者、小児患者、大人の患者について、入院の条件や、治療薬の推奨についての会議と、大曲先生(ダイヤモンドプリンセス号の対応などでも活躍)、中国の医師とのネットを使用した会議であった。PAHOから、日本の大曲医師の紹介を依頼され、調整をするとともに招待され会議に参加した。
《1》大曲先生による発言概要
3月11日までに513件のPCR陽性、約80%は軽症で、死亡率1・75%、重症患者は、体外式膜型人工肺(いわゆるrespiratory ECMO)を使用することもある。
回復までには3~4週間かかり、医療従事者の負担は大きなものになる。日本国内では4つの空港近くに指定病院があるとともに、合計410箇所の病院がコロナ対応可能で1871床が受け入れ可能である。治療薬としては、
(1)カレトラ(Lopinavir, Ritonavir)
(2)アビガン(Favipiravir)
(3)吸入ステロイド(Ciclesonide )などを各医師の判断で使っているが、高齢者などでは、早めに治療を開始した方が良いのではないかという議論がある。
日本での死亡率が低い一因としては、肺炎の早期発見、発症後早期の入院治療が出来ること、高齢者の集中治療が出来、院内感染のリスクが低いことがあるのではないか。
今後の対応としては,20%が重症化すること、重症化するのは、高齢者や基礎疾患のある方なので、このような方に対して、しっかりした治療を行い、医療機関崩壊を防ぐために、軽症者には自宅療養を勧めるべきと考える。
《2》会議全体を通じて
開催初日、ブラジルの保健大臣は、ブラジルにおける挨拶で、手を握らないなどすることを勧めた。治療法はまだ確立されていないので、推奨される治療法については、結論が出なかった。
《結論》
日本の対応が評価されていた。PAHOブラジル代表より、日本の治療法、対応法に関する情報提供に対する謝意があった。世界中で広がるCOVID―19であるが、治療法、対応法を共有するなどして、皆で協力して対応することも出来る。1日も早く収まることを願ってやまない。
ブラジル保健省は、60歳以上の高齢者の自宅待機を推奨している。また、呼吸器症状のある高齢者、持病のある方(糖尿病など)、妊産婦を優先的に保健所でも診察するとの方針を示している。
さらにマンデッタ保健大臣は、家族に風邪の症状が出た場合は、家族全員自宅待機をするよう呼びかけた。また感染者に対するタミフル(oseltamivir)、クロロキン(Cloroquina)など使用が検討されている。
(※なおこの見解は、個人の見解であり、所属する団体の見解ではありません)
【参考資料】
◎SARSコロナウィルス:田口文広、ウィルス第53巻2号p201―209.2003
◎ブラジル保健省ホームページ