24日の政見放送が強い批判を受けたにもかかわらず、ボルソナロ大統領はなおも「外出自粛令(クアレンテーナ)をやめて外に出る」ことを呼びかけるキャンペーンを続け、それが自治体の判断にも影響を与えつつあると、27日付現地紙サイトが報じている。
24日の政見放送後、全国の医療団体が抗議の声を上げ、大統領罷免を呼びかける国民の声も強まっている。だが、大統領は、今度はネットを使い、州の隔離政策を批判するビデオを拡散する戦略を始めている。それは「ブラジル・ノン・ポージ・パラール(ブラジルは止まってはならない」というもので、このスローガンのハッシュタグを伴う形で拡散が行われている。旗振り役の一人は、大統領長男フラヴィオ上議だ。
このビデオは、大統領府通信局(SECOM)からも流されている。同局のファビオ・ワインガルテン局長は今月初旬に行われた連邦政府の訪米後、最初にコロナウイルス感染が確認された同行者だ。同氏以後、訪問団関係者からは、20人以上の感染者が出ている。
また、大統領自身も自身のアカウントで、サンタカタリーナ州バウネアリオ・カンボリウーで行われた、クアレンテーナに反対して自動車で通りを封鎖するデモの動画を拡散するなどの行為を続けている。
こうした行動による影響か、声明直後は「ほとんどの州でクアレンテーナ継続」とされていたのに、マット・グロッソ州とロンドニア州、サンタカタリーナ州の3州が、クアレンテーナの撤回もしくは部分復旧を宣言した。ロンドニアとサンタカタリーナの知事は、大統領の前党・社会自由党(PSL)の所属だ。
また、ボルソナロ派の国民は現在、30日に行われる予定の1964年の軍事クーデターの記念日を讃える行進への参加を呼びかけている。同様の行為は、コロナウイルス感染の恐れから禁止が望まれていたのに強行された、15日の「反連邦議会、反最高裁」のデモの際も行われた。大統領の行動は、翌16日に起きた、史上最大規模の株価暴落、1ドル=5レアル台突入の一因ともみられており、高い代償を支払ったが、大統領は意に介していない。
だが、ブラジルでこうした反動的な動きが起こる中、イタリアのミラノのジュゼッペ・サラ市長は26日、1カ月前にボルソナロ大統領と同様のクアレンテーナ反対キャンペーンを行ったことを謝罪している。同市市民が感染拡大の中で経済活動などを継続した結果、同市では5千人に迫る勢いで死者が出ている。
また、ボルソナロ大統領が敬愛する、同じく保守、極右派の英国のボリス・ジョンソン大統領は27日、コロナウイルスに陽性反応が出たことを告白し、自宅隔離に入った。米国のトランプ大統領も外出を自粛するよう国民に呼びかけている。