ホーム | 日系社会ニュース | 森で光る菌を先住民と見よう=アマゾン研究所の石川さんが絵本=4言語「ひかるもり」刊行

森で光る菌を先住民と見よう=アマゾン研究所の石川さんが絵本=4言語「ひかるもり」刊行

4つの言語で書かれた「ひかるもり」

 日英ポルトガル語の3カ国語と先住民のニェエンガトゥ語による絵本『ひかるもり』(全64頁)が、昨年11月に刊行された。出版記念のイベントで2月25日~3月7日まで訪日していた、アマゾナス州都マナウスの国立アマゾン研究所(INPA)で研究員として勤める石川カズエ・ノエミアさん(47、三世)は、本紙の電話取材に応えた。

 この絵本は、ノエミアさん、京都大学の池田威秀(いけだたけひで)さん、アルデヴァン・バニワさん、アナ・カルラ・ブルノさんの4人による共著。舞台はアマゾンで、物語はノエミアさんが先住民のバニワ族から「光る菌を見に行こう」と誘われる場面から始まる。実際に光る菌を見つけるまでを、ドナ・アブレウさんによる柔らかいタッチの絵で描いた。
 4つの言語になった理由は、「日本とインディオの子どもが読める本を作りたかったから」。2018年に日英ポルトガル語で刊行した絵本を読んだ日本の子どもから、「この本がブラジルでも読まれているのが面白い」と言われた際に「ブラジルでもインディオは読めない」と気づき、今回は先住民の言語を入れた。さらに、スペイン語と他の先住民の言語、トゥカノ語版をサイトで公開している。

東京・下北沢の「ダーウィンルーム」で開催されたイベントの様子(提供写真)

 この本を持参して訪日したノエミアさんは、2月27日に東京都世田谷区の下北沢の『ダーウィンルーム』という本屋でトークショーとサイン会のイベントを開催。3月4日には、「ネギ王」で有名な斉藤ワルテル俊男さんの経営するブラジル人学校「TS学園」にも訪れ、絵本を寄贈した。

 さらに東山研修生移民の本橋幹久さんの推薦で、彼の母校である北海道大学を海外から支援するパートナーに就任した。挨拶と絵本の寄贈を兼ねて同大学の訪問も予定していたが、「新型コロナウイルスの影響で断念した」という。
 ノエミアさんは、「一番楽しかったのは、4つの言語で書いたこと。おかげでインディオの子どもに読んでもらうことができた」と喜び、「多くの日本人に読んでもらいたい」と語っている。
 絵本は、INPAのHP(https://ppbio.inpa.gov.br/publicacoes/livros)で無料ダウンロードが可能。もしくは、VALER出版社のHP(http://www.editoravaler.com.br/index.php?route=product/search&search=Brilhos%20na%20Floresta)から一冊54レアルで購入することができる。


□関連コラム□大耳小耳

 絵本『ひかるもり』を持参して2月25日~3月7日に訪日した石川カズエ・ノエミアさんだったが、新型コロナウイルスの影響が特に大きかった北海道と東京都を訪問予定だったため、「当初予定していた通りのスケジュールは進められなかった」と話す。北海道訪問は中止し、埼玉県にあるブラジル人学校『TS学園』で学生たちに絵本の読み聞かせを行う予定は、3月から学校閉鎖の措置が取られていたために実現しなかった。だが東京の本屋『ダーウィンルーム』でのイベントは、当初より規模を縮小して開催することができ、「皆に喜んでもらえた」とノエミアさんはほほ笑んだ。
    ◎
 ノエミアさんが東京・下北沢の『ダーウィンルーム』で開催したイベントでは、日本で最も有名な探検家・医師の関野吉晴(せきのよしはる)さんも一緒に登壇した。関野さんは1971年にアマゾン全域踏査隊長としてアマゾン川全域を下り、その後も南米での探検を続けているという。93年からは人類発祥の地、アフリカから祖先の拡散の足取りを辿る「グレートジャーニー」という旅を10年間行い、ドキュメンタリー番組としてテレビで放映されていた。さらに国立科学博物館で特別展が間催され、現在はインターネット上(https://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=view&id=265)でその様子を見ることができる。ぜひ見てみては?