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《ブラジル》ますます進むボルソナロ大統領の孤立=コロナ対策で対立する保健相を法相、最高裁、検察庁が支持

孤立化が進むボルソナロ大統領(Marcos Corrêa/PR)

 ブラジルでは新型コロナウイルスの感染拡大に関する国の方針をめぐり、ボルソナロ大統領よりも、ルイス・エンリケ・マンデッタ保健相の方針を優先する声が、セルジオ・モロ法相や最高裁、連邦検察庁にも広がりつつあると、3月31日付現地紙、サイトが報じている。

 モロ法相は3月30日付の臨時官報に、コロナウイルス対策のために国家治安部隊(フォルサ・ナシオナル)を派遣することを認める省令を掲載した。これによると、5月28日までの期間限定で、医療関係者がコロナウイルス感染者に対応する際の補助、病院や救急医療施設などの治安の確保、医療用の資材や薬品類、食料品、衛生用品の輸送や保管に際しての安全保障、港湾、空港、高速道ならびに市街地での治安確保やその支援などの要請に対し、治安部隊を派遣するという。
これはモロ法相が、コロナ対策においても経済活動継続を主張するボルソナロ大統領ではなく、外出自粛令をはじめとした社会的隔離を進めるマンデッタ保健相の方針を優先した故の措置と見る向きが強い。地元紙の報道でも、モロ法相は既に、ボルソナロ大統領がコロナ対策に一向に本腰を入れないことに関して強い不満を漏らしていたと報じられていた。法相はツイッターでも「今こそ、科学の専門家の声を聞くべきだ」とする最高裁のルイス・フクス判事の発言を拡散RTしていた。
 モロ法相の動きに対しては、ボルソナロ大統領が「エゴイスト」などと呼んで批判していることが、一部のメディアで報じられているが、連邦政府内では、経済優先を強く主張していたパウロ・ゲデス経済相も、「一市民としては隔離に賛成」と発言するなど、マンデッタ保健相の方針に従う動きが目立ちはじめている。
 他方、3月30日夜、最高裁のアウレーリオ・メロ判事が、ボルソナロ大統領のコロナ対策に関する種々の言動に関し、「責任法違反に問うべきだ」とする訴えを、連邦検察庁に送付し、同庁の判断(意見書)を求めていたことが明らかになった。この訴えは労働者党(PT)のレジナウド・ロペス下議が3月25日に提出したもので、書類は2日後に検察庁に送られた。アウレーリオ判事は「今の大統領の言動を見てると悲しい」と現地紙の取材で語っている。
 また、連邦検察庁のアウグスト・アラス長官も、「コロナウイルスに関する方針を決めるのはマンデッタ保健相だ」と語り、「もし、大統領が州の隔離政策に反対する大統領令を出すなら、最高裁への異議申し立ても辞さない」との見解を明らかにしている。
 一方、3月29日のツイッターに続き、フェイスブック社も翌30日、同社が運営するフェイスブックとインスタグラムに掲載されていた、コロナウイルスに関連するボルソナロ大統領の投稿を、「不適切な内容で人に危害を与える恐れがある」として削除した。