ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》ボルソナロ=隔離政策への攻撃やめる=これまでより柔らかな政見放送=WHOの見解歪め、激しい鍋叩きも=翌日には虚偽情報拡散で物議

《ブラジル》ボルソナロ=隔離政策への攻撃やめる=これまでより柔らかな政見放送=WHOの見解歪め、激しい鍋叩きも=翌日には虚偽情報拡散で物議

3月31日の政見放送でのボルソナロ大統領(Isac Nóbrega/PR)

 ボルソナロ大統領は3月31日、新型コロナウイルスに関する新たな政見放送を行った。世間から痛烈な批判を受けた3月24日のものと比べると、各州政府が行っている外出自粛令(クアレンテーナ)を批判しないなど、これまでの強硬な姿勢がやわらかいものに変わりはしたが、世界保健機関(WHO)事務局長の言葉を曲解する形で労働と経済の大切さを訴えた上、放送翌日も誤った情報に基づいて失業や食料不足に不満を抱える国民の動画を流して州政府を批判するなど、依然として物議をかもし続けている。1日付現地紙、サイトが報じている。 
 ボルソナロ大統領の政見放送は、3月31日の20時30分から8分間にわたって行われた。24日の政見放送では「大量の閉じこもりはやめて日常に戻れ」とクアレンテーナを批判したが、この日の放送では、こうした政策を直接的に批判する言葉は避けた。 
 また、これまではコロナウイルス感染症を「グリペジーニャ(軽い風邪)」と称し、深刻なものとして捉えるのを拒否してきた大統領が、初めて、同ウイルスによる騒動を、「この世代が直面する最大の試練」という言い方で表現した。 
 だが、この演説の中でも、WHOのテドロス・アダノム事務局長が記者会見の席で発した、「パン(食べていく)のためには労働が必要」という箇所を引用し、労働や経済の重要性を説いた。大統領は同日の昼もこの言い回しをネットで行い、あたかもWHOまでもが社会的隔離政策に反対しているかのような言動を行っていた。 
 だが、同事務局長は、「隔離政策中に貧しい人の生活を支えるべきは政府」という言い方をしており、WHOもボルソナロ氏の発言を公式に打ち消していた。この点は、政見放送終了直後のグローボ局のニュース、「ジョルナル・ナシオナル」でも、即座に訂正されていた。 
 また、有効性が実証されていないマラリアなどの治療薬の使用にこだわる発言も繰り返したが、「いつも国民の命を第一に考えている」と、国民の健康への気配りを見せた。さらに、「労働手帳に登録されていない労働者に月600レアルの支援金を払う」など、国民に対する具体的な経済支援対策も口にした。 
 これまでの姿勢を和らげた政見放送での発言は、セルジオ・モロ法相やテレーザ・クリスチーナ農相など、一部の閣僚を喜ばせた。だが、それでも国民の受けは良くなく、15日連続となった鍋叩きによる抗議(パネラッソ)は、それまで以上に激しいものとなった。 
 また、ボルソナロ氏は翌1日朝、ツイッターでミナス・ジェライス州の青果卸市場(CEASA)で人が閑散とし、物資不足を批判している人の動画を拡散。「これが現実だ」とコメントして、暗に州政府の隔離政策を批判した。だが、同じ時間に現場にいたテレビ・レポーターが「そんな事実はない」と動画で反論。大統領はこの動画を削除する羽目になった。