下本八郎元サンパウロ州議が主催する第5回日系政治運動シンポジウム(Movimento Politico Nikkei)が3月13日昼、サンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会ビルで行われた。ゲスト講演者には福原カルロス氏、吉岡黎明氏が招聘され、日系社会と政治家の今後の在り方をそれぞれに語った。
長年、サンパウロ州議会などで儀典担当職員を務めてきた関係で、福原氏は古くから日系議員との関係が深い。「下本州議のことは40年前から知っている。当時は日系州議がほぼいなかった時代で、その奮闘には常に敬意を抱いてきた。たくさんの有権者に指示してもらえる社会的な提案が、日系政治家にも必要。例えば、日系コミュニティだけでなく、高齢者が増えている。彼らのための政策がもっとあるべき。リバネース(レバノン人)の政治家は数えきれないほどいる。彼らはみな良い補佐官を抱え、マスコミと良好な関係を持っている。それも成功のカギだ」などと述べた。
憩の園を運営する救済会会長などを務めてきた吉岡黎明氏は、「私は日本人の中で生まれ育ったが、今は日系人票だけでは政治家を擁立できない時代になった。ワッツアップなどのSNSを駆使しないと当選できない。私は子供の頃、修身の7の巻までやって倫理を叩きこまれた。日系政治家だけを応援するわけにはいかないが、正直な政治家に票を入れたい気持ちは強い。高齢者問題は大事だが、ブラジルにおいては倫理、教育も大事。基礎教育にもっと力をいれないとこの国は良くならない」と述べた。
それら講演に対し、西本エリオ元サンパウロ州議は「私に入れてくれた5万2千票が無駄になった」と落選を惜しみつつ、「22年間、政治家をしてきたが、一昨年落選したおかげで時間ができ、たまたま心臓の検査を昨年したら、血管の40%が詰まっていることが判明し、治療をして命拾いした」と良いこともあったと近況報告した。
「黎明氏が言う通り、日系票だけでは当選しないが、日本文化の重要性を訴え、日系人を選挙地盤の一部にすることは重要。日系コミュニティと一緒に大きな提案を作り、推進したい。日系人は控えめを美徳とするが、政治家としてはそこから一歩踏みでて、しっかりと主張しなくては」と力を込めた。
グアラチンゲーター市のヤスムラ・レジス副市長は「今はSNSの時代。このシンポもフェイスブックを作って広めたらしい。我々もそれをシェアーして広めるから」とコメントした。
サンパウロ市の羽藤ジェオルジ市議は「フェイクニュース(虚報)を流されて困っているが、それに打ち勝つためにもっと選挙地盤に実際に顔を出さなければと心掛けている。日本文化を広める手伝いももっとやっていきたい」と語った。
下本元州議は「日系政治家やリーダーが一般社会のためになることをやっていることを、もっと一般人に周知しなくては。社会を良くしてブラジルの生活水準を上げることを目指してほしい」と締めくくった。
□関連コラム□大耳小耳
第5回日系政治運動シンポジウムの数日後、サンパウロ市の羽藤ジェオルジ市議は、母親がコロナウイルスの検査で陽性反応が出たことをメールで参加者に伝えた。ただし、市議本人は母親と10日間ほど身体接触がないとのこと。まさに、いつどこで誰が感染していても不思議ないご時世になった。