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クロロキンをコロナウイルス治療薬に=アメリカとブラジルで大統領が強引に推進=背後に製薬会社等の勢力も?

トランプ、ボルソナロ両大統領(Alan Santos/PR)

 米国のトランプ大統領が推奨し、ブラジル国内でも特定の医師勢力が推薦するクロロキンや同薬発展系のヒドロキシクロロキンを新型コロナウイルスの治療薬としても認めさせようと、ボルソナロ大統領が動いている。同薬はコロナウイルスの特効薬として期待されているものの、まだテスト段階で、一般使用するには人体への危険も懸念されている。8日付ブラジル国内サイトが報じている。 

 クロロキン、ヒドロキシクロロキンの存在は6日夜の記者会見で、ルイス・エンリケ・マンデッタ保健相が、「大統領との会談後、ある医者たちからクロロキンをコロナウイルスの治療薬として解禁するのを認める大統領令への署名を求められたが断った」と発言して注目を浴びている。 
 クロロキンは抗マラリア剤として開発され、現在は、日本で開発されたアビガンなどとともに、コロナウイルスに対する治療薬になりうるとして国際的にも期待されている。 
 同薬に関しては現在、ボルソナロ大統領が敬愛する米国のトランプ大統領がコロナウイルスの治療薬として承認させるよう積極的に働きかけている。3月21日には早期に使用できるよう、同国食品医薬品局(FDA)に承認を呼びかけ、FDAも同月29日に緊急治療薬として承認している。 

 また、ブラジルにおいても、権威ある心臓外科医でコロナウイルスに感染したロベルト・カリル医師が、クロロキンを服用して回復したことを認めている。同じく感染病学の権威ダヴィ・ウイッピ医師も、コロナウイルス感染症からの復帰後に受けた取材で、「クロロキンを服用したか」の問いに曖昧な答えを行った。自分自身も医師のマンデッタ保健相も、「医師が自分の責任で処方する分には解禁しても良い」との見解を示している。 
 だが同時に、マンデッタ保健相は、「一般に服用されるには、多くの実験結果が必要」として、同薬のコロナウイルスの治療薬としての一般使用に慎重な姿勢を取っている。クロロキンは副作用として網膜症や心臓障害が報告されており、1950年代に使用禁止になった前例がある。クロロキンに比べ、比較的安全とされるヒドロキシクロロキンも、トランプ氏の前述の発言後、ナイジェリアで買い求めた人が続出し、2人の中毒患者が出たことが報告されている。 
 また、治療薬開発の一方で、政治家と医療関係者たちの間での不正行為の疑惑が早くも報じられている。エスタード紙によると、トランプ大統領はヒドロキシクロロキンに関して、特定の製薬会社との密な関係が取り沙汰されているという。また、ボルソナロ大統領の背後でも、免疫医学の医師、ニーゼ・ヤマグチ氏がロビー運動を仕掛けているとの説が報じられ始めている。