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コロナ禍=ファヴェーラ住民の移動検討=密閉、密着、密接回避に向け

リオ市がファヴェーラの高齢者用に用意したホテルの部屋(Marcos de Paula/Divulgação Prefeitura do Rio)

 【既報関連】新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、医療崩壊の可能性が一段と高まる中、ファヴェーラ(スラム街)の住民を一時的に移動(転居)させる事が検討されていると15日付現地紙が報じた。

 ファヴェーラは小さな家に大勢の人が住む例が多く、リオ州では人口の13%にあたる220万人がファヴェーラに住んでいる。1平方キロあたりの住民数(人口密度)は9900人だ。
 この状態は新型コロナ感染症予防のために避けるべき3密(密閉空間、密集場所、密接な場面)を全て満たしている。専門家は、ファヴェーラでのコロナ感染症拡大を予防するには人口密度を5千人程度に減らす必要があると見ている。
 だが、ファヴェーラの人口密度を減らす事は容易ではない。専門家は、公的な施設やホテルに一部住民を移す事と、衛生管理の徹底や病床数増加などを提案している。具体的には、住民の移動、衛生用品の配布または衛生用品購入が可能な所得確保、上下水道の整備、集中治療室の能力拡大、マスクの使用などだ。
 専門家は、このような対策を導入し、感染症患者の急増を防ぐ事が出来れば、集中治療室が満杯となって新たな患者を受け入れられない期間は短くなり、リオ州で1万5千人、サンパウロ州では2万6千人の命を救う事が出来ると見ている。
 ファヴェーラや都市周辺部は人口密度が高く、小さな家に大勢が住んでいる事はこれまでも懸念され、対策の必要も説かれていたが、具体的な対策がとられる前に、ファヴェーラでもコロナ感染者や死者が出始めた。
 対策は急務と見たリオ市のクリヴェラ市長は3月25日に、ファヴェーラ内の高齢者をホテルに移す計画を提唱した。
 だが、6日現在でホテルへの移動に同意したのは、ロッシーニャとヴィジガルの22人だけ。10日現在も40人だったため、クリヴェラ市長は同日、ファヴェーラに住む60歳以上の人と、市内で最も高齢者が多いコパカバーナ地区に住む80歳以上で独り暮らしの人を強制的にホテルに移すことを検討し始め、裁判所に判断を仰いだ。
 サンパウロ市やリオ市、リオ州などは、ファヴェーラ住民への食料品や衛生用品のセット配布、臨時病院設営などの準備も進めている。臨時病院設営が検討されているサンパウロ市のファヴェーラ、パライゾポリスでは、行政に先立ち、住民組織が医師や救急車を手配。住民の手でマスクを縫い、配布するなどの自衛策を講じている。