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逆効果な専門家の未来観測「外出自粛は2022年まで」

隔離政策下のサンパウロ市内(govesp)

 このところ米ハーバード大学の医療専門家などが、新型コロナウイルスや外出自粛に関して以下のような観測を出している。「ワクチンの開発には早くて1年半かかる」「2021年秋までコンサートは開けない」「社会的隔離生活は2022年まで続く」。
 こうした報道は、コロナの強さを示すために研究者や報道する側は伝えたいという意図があるのかもしれない。ただ、少なくともコラム子はこういう研究発表やその報道に対して強い違和感を感じているし、ツイッターなどでこれらの話題に関して見てみても「そんなに長くは我慢できない」「気が狂いそう」などの言葉も見る。

 これはコラム子も懸念していたことなのだが、「専門家の言うことがなんだというのか」「どうせみんないつかは死ぬのだから楽しいほうがいい」などの声も出てきている。「そうか。それまで頑張ろう」と言った反応は目にしていない。
 補足しておくと、これらの言葉は欧米の言語で見たもので、隔離が何なのかも今ひとつ実感しているとは思えない日本人によるものではない。
 どうしてこのような反応が起こってしまうのか。それは、コロナ禍の大きな国では、国民が「短期の対策」として隔離政策を受け止めているからだ。ブラジルの場合も含め、この政策を実施中の国民から、その間の経済面での不満の声も、少なくとも開始当初にほとんど上がっていなかったのも、そのためだろう。
 だが、そこは所詮、人間。ブラジルでは実施から2週間もすれば人々の外出も目立つようになった。それは何もブラジルに限ったことではなく、イタリアでもスペインでも、外出禁止や自粛実施国から普通に報じられる話だ。
 そして、このタイミングでトランプ大統領がWHO(世界保健機構)の方針を無視しはじめ、同機構の資金援助を差し止めるなどと言い出したり、ボルソナロ大統領が隔離解除を訴えてジョアン・ドリアサンパウロ州知事への抗議デモが起きたり、こういう主張がある程度の支持を受けるようになってきているのも、この「隔離疲れ」のタイミングを利用されているような気がする。
 世の中には2、3週間で我慢の限界に達している人もいる。我慢はしているものの、心の奥底では「早く終わらないかな」と思っている人も多いはず。
 そのタイミングで、「2022年まで続く」のような気の遠くなる研究成果を今、発表して、果たして建設的な意味があるのだろうか。
 まるでマラソンの30キロすぎで、一番息も絶え絶えで苦しいタイミングで、「休まずに、今までの3倍分走れ」と言われているようなものだ。
 現在は、世界各国に、コロナ情報の専門サイトで各国での感染、死者の数をチェックしている人も少なくない。ここ最近では、最も注目されている「進行中の感染者グラフ」で、ポイントとされる「感染者数下降カーブ」にスペインやイタリアが差し掛かりつつあり、「とりあえず下がりつづければ数カ月後には」とポジティヴに考え、隔離をしっかり守ろうと心がけている人もいる。前述の未来観測は、そうした人の希望も憂鬱にさせかねない。
 コラム子も前から感じていたのだが、WHOや専門家の発表は、「身体」のことは考えていても、実生活について今ひとつ考えられていない印象があった。
 コラム子の場合は、「経済」よりもむしろ「メンタル・ヘルス(精神衛生)」が軽視されているように感じていた。誰もが機械のように我慢できるわけではない。それが大人だけでなく、子供もいるのだから、なおさらだ。
 「2022年まで続く」のような発表を行うとすれば、せめて現在の感染爆発がいったん収束するであろう6月か7月に、いったん隔離を解いた後に「第二波に気をつけろ」と警鐘を鳴らす時にやるべきだと思うのだが。(陽)