ボルソナロ大統領は19日、ブラジリアで行われた、軍事クーデターや新たな軍政令第5条(AI5)施行を支持したデモに自ら参加し、多くの国民を驚かせた。新型コロナウイルスに対する反隔離政策デモは思わぬ方向に発展し、各界から強い批判の声が高まっている。20日付現地紙などが報じている。
16日に新保健相に指名されたネウソン・タイシ氏は、「社会的隔離策を急に変えるようなことはしない」と、国民の64%が反対したマンデッタ前保健相解任への反発を和らげるような発言を行い、大統領もそれに理解を示すような態度を見せていた。だが、週末のボルソナロ氏の行動はそれとは正反対だった。
18日、大統領は官邸前に集まった反隔離を求める集団の前に立ち、商業活動再開などを擁護。さらに、国内感染者が3万人台、死者が2千人台に乗り、医療崩壊さえ起こりはじめているのに、「(最終的には)国民の70%がコロナに感染するはず」とも発言した。
この日はサンパウロ市などでも、大統領支持者たちによる、州知事たちの行う隔離政策に反対する車両デモ(カレアッタ)が行われた。サンパウロ市で行われたものは、コロナ感染者を受け付ける病院の前の通りを塞いだことでも問題視された。同日発表のダッタフォーリャの世論調査では、国民の79%が「隔離政策に従わない人には罰則を適用するべき」と答えている。
また、19日には全国規模で、軍事クーデターや新たな軍政令第5条(AI5)を支持するデモが行われた。この伏線には、マンデッタ保健相解任後、ボルソナロ氏がアルコルンブレ、マイアの上、下院議長と激しく対立したことがあった。
ボルソナロ氏は陸軍本部前に集まったデモの参加者に対し、「政党同士の談合の時代は終わった。これからは国民に主権がある。交渉などごめんだ」と、独裁者的な物言いも行った。デモ参加者たちは、「辞めろ、マイア」「AI5」「議会閉鎖」「最高裁閉鎖」などとも叫んだ。
大統領の言動には強い反発も起こった。最高裁ではルイス・ロベルト・バローゾ、ジウマール・メンデス、マルコ・アウレーリオ・メロ判事が批判を行った。政界ではルーラ元大統領がボルソナロ氏の解任を求めたほか、カルドーゾ元大統領や、18年大統領選候補のシロ・ゴメス氏らが批判。マイア氏も民主主義を擁護し、「ブラジルではコロナと共に独裁主義的なウイルスがはびこっているようだ」とし、ボルソナロ氏を批判した。
また、20州の知事たちが連名で、上院と下院に連帯を示す意向を発表し、ボルソナロ氏の行動に反対の意を示した。
さらに、通常はボルソナロ氏に好意的な印象のあった政治団体の「ヴェム・プラ・ルア」も19日のデモに反対の声明を発表。予てから隔離賛成の陸軍も、「コロナ対策に集中すべき」との姿勢を示し、ボルソナロ氏の行動に不快感を示した。