【既報関連】ブラジルでの新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、29日の同国保健省発表では感染者7万8162人、死者5466人を数えた。前日の発表と比較して、感染者は6276人(8・7%)、死者は449人(8・9%)の増加だ。そんな中、私立病院や臨床検査クリニック、画像診断クリニックではコロナウイルスに感染することを恐れ、受診者が減っていると、29日付現地ニュースサイトが報じた。
全国私立病院協会(Anahp)によると、ブラジル国内でもコロナウイルスへの感染が起き始めた2月末~3月始め以降、医療検査の実施件数は前年同期比で約80%落ち、手術件数も半分に減った。Anahp事務局長のマルコ・アウレリオ・フェレイラ氏によると、私立病院は収入のほぼ50%を手術代に依存しているという。
ブラジル診断医学協会(Abraemed)も、画像診断クリニックの需要が平均70%減ったと報告。臨床検査クリニックも、検査の需要が平均60%減少した。
Abramed事務局長のプリシラ・フランクリン・マルチンス氏は、「需要低下は著しい。医療サービス提供会社を経済的にサポートするため、経済開発銀行(BNDES)から融資を受けられないか、経済省と話し合っている。コロナ禍が去った後は需要が回復すると予想されるため、それに対応するための能力を保つことも必要」と語った。
AnahpとAbramedは、「コロナ禍の前から行ってきた治療は続ける必要があること」や「臨床検査の安全性」を国民に周知する必要があるとしている。
事務局長たちは、「自分たちの主張は、医療機関の財政面だけを心配したものではなく、本来行うべき治療や検査を過度の心配で遅らせたり、中断させたりしないためのもの」としている。
また、国家衛生監督庁(Anvisa)は28日、簡易版の新型コロナウイルス感染判定検査キットを薬局で販売することを認めた。コロナ禍に伴う特別措置は、2月4日に保健省が出した、「ブラジル領内における公衆衛生上の緊急事態」が解かれるまで有効だ。
薬局は検査の判定能力を持つ専門家を置き、検査結果を地元の保健当局に報告する義務がある。薬局協会によると、検査キットの大半は中国製で、費用は約200レアル(約4千円)、咳や高熱などの症状がある人や、そうした症状が出ていた人を対象としている。
Anvisaのアントニオ・ブラガ・トーレス長官は、「簡易検査キットの使用、販売承認は、コロナ検査を求める人が公的医療機関に殺到するのを防ぐための一戦略」と述べたが、「簡易検査で陰性でも感染している可能性があるし、陽性でも感染が確定する訳ではない。簡易検査の結果は正式診断の補助の域を出ない。正式診断はあくまで、臨床データや再確認検査の結果も見た上で出されるべき」とした。