ホーム | コラム | 樹海 | 公人としての良心と責任感

公人としての良心と責任感

ネウソン・タイシ保健相(Júlio Nascimento/PR)

ネウソン・タイシ保健相(Júlio Nascimento/PR)

 12日夜、ボルソナロ大統領がコロナウイルスの感染検査の結果を最高裁に提出した。訪米団員など、20人以上が感染しても陰性と言い続け、メディアから公開を求められていたものだ。
 裁判所からの提出命令に対し、「見せない権利がある」と嘯いて拒否し続けたため、最高裁に訴えられた大統領。とはいえ〃公人〃なら、職務遂行に必要な条件を有している事を示す義務もある筈だ。
 12日には、「4月22日の閣議の録画は破棄されるべきだった」「閣議はもうやらない」「13日の会合は茶話会」と言う等、〃公人〃としての良識や良心を疑う言動が続く。
 4月の閣議の内容が全面公開となるかは未定だが、12日には、コロナ患者にクロロキンを使う場合の危険性を警告したタイシ保健相に、「私と同調しろ」とも命じた。
 前任のマンデッタ氏は、医師としての良心や良識に基づき、コロナの感染拡大抑制には隔離政策が不可欠と説き、解任された。同氏は退任後、「大統領は科学を捨てた」と語ったが、タイシ氏も就任後、隔離解除は時期尚早と発言しており、大統領の意向に反する発言は少なくとも2度目だ。
 だが、「国民の70%は感染するはずだから、隔離は無駄。早く解除せよ」との論が、1億5400万人の感染と180万人の死を意味する事を大統領が認識しているかは疑問だ。トランプ米大統領の支持者夫妻が独断でクロロキンを飲んで急死した例もある。
 〃公人〃であるにも関わらず、医学的な見地からの隔離政策や未承認の薬への警告が自分の意に沿わないとして、大臣解任をちらつかせるのが大統領の権利なら、国を治め、国民の生命を守るという責任もしっかりと果たすべきだ。(み)