ブラジルでは新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、社会的隔離を緩和する国が出始めた。他方、ごく緩い規制のみを採用し、ボルソナロ氏が反隔離の例とするスウェーデンは死者が急増中だ。
同国は一人暮らしの人が過半数で、何も言わなくてもある程度隔離状態が出来る。だが、感染拡大当初から外出を規制した国より高かった死亡率(100万人当たりの死者数)が、13~20日は1日あたり6人を超え、世界一となった。同国はそれでも、イタリアやスペインなどよりましだという。
だが、ボルソナロ氏の「ハイリスクの人だけ隔離し、若者は働け」との言葉がいかに危険かを示す例が、イタリアやスペインだ。両国は外出規制導入が遅れた上、若者が両親と同居する数世代同居例が60%近い。専門家達は、外で感染した若者が家庭や高齢者収容施設での感染・死亡率を高めたと考えている。
そういう意味で心配なのは、数世代同居世帯も多いファヴェーラ(スラム街)や高齢者収容施設での感染だ。残念だが、ブラジルではスラムでの感染拡大が進み、黒人系の人の致死率は白人系より高い事が指摘されている。高齢者収容施設での感染や死亡例も起きている。
実際には1月か2月初旬に市中感染が始まっていたのに、イタリアやブラジルでの外出規制導入は1カ月半以上遅れ、感染抑制力が大幅に低下。濃厚接触が好きで容易な国柄も感染拡大を助けた。
感染リスクが最も高いのは病院や公共交通機関である事も、低所得者層を中心とする感染拡大抑制を困難にする。短期間で感染拡大が抑制出来ても経済損失は大きいが、遅きに失した外出規制が充分機能してないブラジルでは、人的、経済的損失の拡大は不可避だ。(み)