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《ブラジル》緊張高まる最高裁 vs.連邦政府=セウソ判事「刑法に従わねば大統領停職も」と一喝

セウソ判事(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)

 最高裁のセウソ・デ・メロ判事が1日夜、ボルソナロ大統領と次男カルロス氏の携帯電話押収要請をお蔵入りさせた。だが、「法的命令に従わない場合は停職も起こり得る」と大統領に注意を促す発言をするなど、依然、大統領と最高裁の緊張感は強いままと、2日付現地紙、サイトが報じている。
 セウソ判事は5月22日に、検察庁長官に大統領親子の携帯電話押収と大統領からの事情聴取を求めた。その直後、アウグスト・エレーノ安全保障室(GSI)長官が、「携帯電話を差し出す必要がでてくれば、不測の事態が起こり得る」と軍事クーデターを匂わす発言を行い、一触即発の緊張した空気が流れた。
 その他にも、連邦政府の反対にも関わらず、セルジオ・モロ前法相が大統領の連邦警察に介入した証拠とする4月22日の閣議ビデオをほぼ全編公開することを許可。5月31日にも、大統領とその支持者を指して「ヒトラーが台頭し始めた頃のドイツのようだ」と評したことから、軍関係者からセウソ判事の解任を求める声が起こるなど、政府とセウソ判事、果ては最高裁との関係は悪化していた。
 今回のセウソ判事の却下判断は、こうした空気の中で行われた。親大統領派として知られるアウグスト・アラス連邦検察庁長官は既に、大統領の携帯電話押収に関して、否定的な判断を伝えていた。
 だが、セウソ判事は今回の判断と共に出した声明で、「いかなる場合でも、司法判断には敬意を払わなければならない」と、自身や最高裁にかけられている圧力を牽制する発言を行った。更に「司法に従わないなら、大統領停職も起こりうる」と、ボルソナロ氏に対して警鐘を鳴らした。

 大統領の携帯電話押収いかんに関わりなく、国民の約6割はすでに、公開された閣議ビデオなどの影響で「大統領は連警に干渉した」と考えていることが世論調査で明らかになっている。
 最高裁と連邦政府との緊張感はこれだけではない。フェルナンド・アゼヴェド防衛相は1日、最高裁のアレシャンドレ・デ・モラエス判事のサンパウロ市の自宅を訪れ、会談を行っている。モラエス判事は4月に、「コロナウイルス対策に関する決定権は州と市にある」との判断を下した上、5月27日には大統領の息子や大統領支持者たちを対象とするフェイクニュース(FN)捜査を命じたことから、大統領や大統領支持者らがセウソ判事と共に攻撃対象にしている。アゼヴェド氏は、5月31日にブラジリアで行われた反連邦議会、反最高裁のデモに大統領と共に参加。大統領と共にヘリコプターでデモの上空も飛んでいる。
 最高裁は1日、アラス検察庁長官が求めたフェイクニュース捜査打ち切りに関する審理を10日に行うことを決めた。連邦政府としては、大統領府内に非公式に存在するとされる隠密SNS拡散グループ「憎悪部隊」のリーダー格と目されているカルロス氏に捜査の手が伸びることを恐れている。しかし最高裁判事の大半は既に「捜査続行を望む」との意向を表明しており、ボルソナロ支持者による最高裁への攻撃的姿勢を批判する判事も少なくない。