アウグスト・アラス連邦検察庁長官は1日、「三権分立の原則が崩れ、一つの権力が他の権力を侵害した場合、軍隊が動きかねない」と発言したことが批判を受け、翌2日、「憲法はいかなる場合も軍事介入を認めない」と言い直した。同長官は親ボルソナロ大統領派としての法律解釈や発言が多く、独立捜査機関である検察庁内部で強い反発を呼んでいる。2、3日付伯字紙などが報じている。
アラス長官は1日、ジャーナリストのペドロ・ビアル氏からのインタビューで、憲法142条に関する独自の解釈を示した。同条では、行政・立法・司法の三権の独立性尊重を記しているが、同長官は「それが守れない場合は、軍隊が介入することがありうる」との見解を示したのだ。
ボルソナロ大統領の連邦警察介入疑惑の捜査や、大統領関係者も多数絡んだフェイクニュース捜査に対して、最高裁が近ごろ強い姿勢で臨んでいるため、連邦政府が反感を強め、現政権関係者の間で「軍事クーデター」を擁護する発言が出ている。その状勢を背景に、独立捜査機関の長としてのどのような憲法解釈をするかと問われて、「軍事介入」を容認するような発言をした。
だが、この発言が報じられると、政界に大きな波紋を投げかけた。フラヴィオ・ジノ・マラニョン州知事のように、「三権の均衡を見張り、憲法を守る役目は最高裁にある」と公然と反論する人物も現れた。
それを受けて、アラス長官は「いかなる場合においても、憲法には軍事が介入する余地はない」と言いなおして、前言を撤回した。
さらに同長官は、「フェイクニュースの捜査に反対したことはない」とも発言した。同長官はフェイクニュース捜査が行われた5月27日に、同捜査の打ち切りを最高裁に求めている。
アラス発言の変化の背景には、同氏に対する、検察庁内部の強い反発がある。検察庁内部では、ボルソナロ大統領が5月28日に行った「アラス長官を最高裁判事候補に考えている」との発言に対する強い不快感が漂っており、「検察庁長官を従来のトリプリセ(検察庁の内部選挙で3人の候補を選出し、その中から大統領が選ぶ方法)を遵守させる署名」には、すでに過半数が署名しているという。
アラス氏はトリプリセを無視して大統領が選んだため、昨年8月に指名されたときから内部的に反感を買っていた。アラス氏自身も、今回の大統領による最高裁判事候補発言には難色を示している。
ボルソナロ氏とアラス氏の蜜月ぶりは有名で、就任以来既に、少なくとも6度の会談を行っている。これはテメル前大統領とドッジ前長官、ジウマ元大統領とジャノー元長官の同時期比較で2倍以上にあたる。その分、ボルソナロ氏がアラス氏の助けを必要とし、圧力をかけている疑いまで生じている。