ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》大統領府が福祉費を宣伝費に転用=コロナ禍最中の商業活動再開PRに大金?

《ブラジル》大統領府が福祉費を宣伝費に転用=コロナ禍最中の商業活動再開PRに大金?

3日のボルソナロ大統領(Marcos Corrêa/PR)

 格差是正を目指す福祉政策「ボウサ・ファミリア(生活扶助、BF)」に使われる予定だった8390万レアルもの資金が、大統領府通信局(SECOM)に転用されていたことが明らかになった。しかも、新型コロナウイルスの影響で国民の生活が困窮している最中に行われたことに非難の声が高まっている。4、5日付現地サイトが報じている。
 これは2日に連邦政府官報が明らかにしたもので、経済省のバルデリ・ロドリゲス局長の署名によるもの。この資金転用は連邦政府の要望によるもので、「支出の上限に対応するために、上限を超えそうなところから、費用の足りていないところに資金を移したもの」「BFで最も支払いが実践されていなかった北東部の費用を移したもの」と軽微な出来事という見解を示した。
 600レアルの緊急援助金とBFの両方の受給資格がある人は、どちらかを選ぶ必要があり、北東部では前者を選んだ人が多かったために〃余った〃状態になっていたと説明した。
 この費用の転用は、他に財源がないために窮余の策として考えられ、連邦議会による承認手続きを必要しないものから選ばれたという。
 問題とされているのは、この資金転用が、コロナウイルスで国民が困窮した状態の際に行われたことだ。とりわけ、コロナ禍の長期化が予想され、現在は3カ月間だけの600レアルの緊急援助金の支払い期間を延長する議論が起き、それに伴う財源創出の必要が叫ばれている時期に行われたことだ。
 この緊急援助金の延長については、ロドリゴ・マイア下院議長がこれまで通りの600レアルを希望しているのに対し、経済省がそれを下回る額を希望するほど費用には余裕がない。

 今回の8390万レアルもの費用があれば、1263個の人工呼吸器の購入、もしくは85万6164回分のPCRテストが可能といわれる。
 アジェンシア・エスタード4日付電子版によれば、野党PDT(民主労働党)のタバタ・アマラウ連邦下議は「まさに生活扶助への行列が長くなり、通信局の不適切広告の大量出稿がフェイクニュース調査委員会で問題になっている最中にこの転用が行われた」と厳しく批判した。
 しかも、SECOMは「命と雇用の保護」という商業活動再開を求めるキャンペーンに1780万レアルもの予算増額を認められたばかりだった。
 連邦議会では、この費用の転用に対して強い反発が起こっており、下院ではそれを阻止する法案がすでに五つ作られているという。
 北東部は労働者党(PT)をはじめとした左派の知事が多く、大統領支持率が最も低い地域であることから、ボルソナロ大統領がかねてから敵視しているところとしても知られている。