ボルソナロ大統領は9日の閣議の席上、世界保健機関(WHO)が行った発言の一部を都合よく解釈し、商業活動の早期再開は可能とする発言を行った。これは、新型コロナウイルスの感染者が70万人を超え、死者数でも世界第2位の英国との差が段々縮まっている中での発言だった。9日付現地サイトが報じている。
今回の閣議は、セルジオ・モロ前法相が「大統領が連邦警察に介入した証拠」として一般公表され、ウェイントラウビ教育相やサレス環境相の問題発言なども暴露されて物議を醸した4月22日以来のものだ。今回の閣議の模様は、初めてテレビ中継された。
この席でボルソナロ大統領は、8日にWHOのマリア・ヴァン・カーコヴ医師が語った「無症状の感染者からの感染は少なそう」との発言を引用し、「まだそうと決まったわけではないが、症状がない人からの感染は限りなくゼロに近い」「この発言は間違いなく、最高裁や州や市が主張している規制を解いて、一刻も早く経済活動をはじめるための契機となる」と力説した。
ただ、カーコヴ医師の発言は、実証例が少なくて、調査が完結する前の段階で行われたもの。「アシントマチック(症状のない状態)」と「プレ・シントマチック(症状の出る前段階)」についてもきちんと区別して話していたが、ボルソナロ大統領が曲解、引用した。WHOは9日、「無症状の感染者からの感染は実際に起っている」として、改めて注意を促している。
ブラジルは現在、感染者数が世界2位で、死者数は3位。1日あたりの感染者、死者数も米国と世界一を争っている状況で、WHOが理想とする「規制緩和のめど」からは程遠い状態にある。
大統領は、引き続いてクロロキンをコロナウイルス感染症の治療薬として推進することへの強い意向を見せた。その際に「実験でも良い結果が出ていて、多くの国が既に使用しているにもかかわらず、十分な結果が出ていないとして反対されている」と、WHOへの恨み節をはいた。
この閣議では、エルネスト・アラウージョ外相もWHOを強く批判した。同外相は「WHOは見本となりうるような機関ではない。ウイルスの起源や人体の感染に関するデータもあやふやだ」「コロナウイルスの蔓延は偶然ではなく、計画的なものだ。それが政治的なものかどうかを確かめる必要がある」とし、以前から主張しているコロナウイルスのパンデミックは中国による陰謀との説をここでも唱えた。