10日午前、アマゾン河口にあるパラー州で、エルデル・バルバーリョ知事(民主運動・MDB)らを対象とした、新型コロナウイルス対策のための人工呼吸器不正売買疑惑に関する捜査が行われた。同様の捜査は5月26日にリオ州でも行われ、ウイルソン・ヴィッツェル州知事に対して、10日にリオ州議会は罷免審議を始める決議をするなど緊張感が高まっている。しかもリオ捜査の際に、ボルソナロ大統領派のカルラ・ザンべッリ下議(社会自由党・PSL)が、捜査予告を行っていたことが問題視されたが、今回も不気味な“予言”がなされており、捜査情報の事前漏洩疑惑が深まっている。10日付現地サイトが報じている。
今回の捜査は「ベルム作戦」と名付けられ、パラー州、サンパウロ州、リオ州、サンタカタリーナ州、エスピリトサント州、ミナス・ジェライス州、連邦直轄区で、23の家宅捜査令状が執行された。
捜査対象となったのはバルバーリョ知事や同州保健局長で全国保健局審議会議長のアルベルト・ベウトラメ氏らのパラー州政府関係者や、資材購入を仲介した企業家ら計13人で、現金約700万レアルも押収された。
捜査を許可した高等裁のフランシスコ・ファルコン判事によると、同州が購入した人工呼吸器の売買契約に不正の痕跡が見られたという。同判事によると、企業家の一人は知事の友人で、保健局長は既に決まっていた購入計画を正当化するための偽装入札を行ったという。同判事は、バルバーリョ氏やベウトラメ氏らの口座から、不正売買容疑に使われたとされる2520万レアル分の資産差し止めも命じた。
今回の捜査に関し、バルバーリョ知事は、「不正取引を行ったとされる企業の器具はもう差し止め、購入資金も公庫に戻した。その企業家は私の友人でもなく、私が違法な売買計画について知らなかったことも証明されている」と主張した。新型コロナ治療では使われないタイプの機種が納入されたため、返品した経緯がある。
今回の捜査は、ウィルソン・ヴィッツェル知事などを対象として、5月26日にリオ州で行われたものに続く、人工呼吸器の不正売買疑惑の捜査だが、二つの捜査に共通する疑問がある。
リオ捜査の前に、ザンベッリ下議が不正捜査を行われることを事前にラジオで語り、「連邦警察の捜査情報が漏れているのではないか」との疑惑が浮上したからだ。捜査当日はボルソナロ大統領も、「私が大統領でいる間はまた起きる」と語っていた。
ザンべッリ氏は、ボルソナロ大統領による連邦警察への干渉を理由にセルジオ・モロ前判事が辞任しようとした際、辞任を覆すための説得を試みた人物だ。同氏は、リオ州での捜査が行われた5月26日、CNN局のインタビューに、「バルバーリョ氏のことが心配だ」と語っており、今回の捜査も予期していたことを匂わせていた。
ロドリゴ・マイア下院議長は10日、ラジオのインタビューで同下議について訊かれ、「事前漏洩がないなら、彼女は水晶の玉でも持っているのだろう」と皮肉った。
ザンべッリ氏は10日、自分を占い師にたとえながら、「次はジョアン・ドリア・サンパウロ州知事に捜査の手が伸びる」と予言した。いずれも大統領の意に反して、コロナウイルス対策としての外出自粛を積極的に行っている知事ばかりだ。