ボルソナロ大統領は10日、4年前に廃止された通信省を復活させることを発表し、ファビオ・ファリア氏(社会民主党・PSD)を通信相に指名した。これは、大統領がこのところ接近中の中道勢力「セントロン」にトップ閣僚職を与えることを意味する。また、大統領は選挙公約で省庁削減を宣言していたが、省庁数はさらに増加する可能性がある。10、11日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領は10日、SNSを通じて、通信省を復活させると発表した。大統領は、「科学、テクノロジー、イノヴェーション、通信の機能を、科学技術省と通信省の二つで分けることにした」と語った。
通信省は1967年から存在していたが、2016年5月にジウマ大統領(当時)が罷免審議で職務停止となった際、テメル大統領代行(当時)が廃止した。同省は約4年ぶりの復活となる。
大統領はその後、通信相にリオ・グランデ・ド・ノルテ州選出下議のファビオ・ファリア氏を選んだと発表。同省復活は暫定令で決まったもので、連邦官報にも正式に掲載された。
ファリア氏は42歳と若く、現在4期目となる連邦下議だが、同氏の妻が、視聴率2、3位の位置にいるテレビ局、SBT局の社主でブラジルの芸能史に残る名司会者、シルヴィオ・サントス氏の娘でタレントのパトリシア・アブラヴァネル氏であることは周知の事実だ。ボルソナロ氏は就任当初からシルヴィオ氏と接近する姿勢を見せており、最大局だが自身への批判が多いグローボ局に対抗し、SBTに独占取材を行わせたりもしている。
今回の人事は、進歩党(PP)や自由党(PL)、ブラジル労働党(PTB)、共和者(RP)らによる中道勢力「セントロン」を構成するPSDに大臣職を与え、より強い支援を得るためでもある。
大統領は就任当時、政党への連邦政府職の振り分けを「汚職の根源」として嫌っていたが、自身への罷免請求が殺到したことで方向を転換。これらセントロンの政党には5月から、連邦政府内の職務を与えはじめていたが、今回の人事により、それが遂に大臣職にまで至ったことになる。ダッタフォーリャの調査では、大統領のセントロン接近に国民の67%が反対している。
また、ボルソナロ氏は「省庁数を15まで減らしたい」と公約に掲げていたが、通信省の復活により、省庁数は22に増えている。一部報道によると、大統領は治安省の復活も検討中で、担当大臣には、4月に連邦警察長官に指名しようとしたが、ボルソナロ氏の連警人事介入疑惑と、大統領一族と親密な関係にあることを理由に、最高裁から就任を差し止められたアレシャンドレ・ラマジェム氏を考えているという。
通信省は大統領府社会通信局(SECOM)の職務の一部を分担することになっており、11日には、SECOM局長で、ボルソナロ氏の広報役の一人として有名になったファビオ・ワインガルテン氏が、通信省ナンバー2に指名された。