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《ブラジル》緊急援助金延長で意見対立=大統領と議会が再び険悪に=教育相の学長選出権も差し戻し

マイア下院議長(左)とアルコルンブレ上院議長(Jose Cruz/Agencia Brasil)

 連邦議会とボルソナロ大統領が、コロナウイルス対策の緊急援助金、教育省絡みの暫定令(MP)をめぐって、再び対立を強める展開を見せている。11、12日付現地サイトが報じている。
 コロナウイルスの緊急援助金は4月から支払いがはじまり、1回600レアルを3回の計1800レアル(母子家庭の家長には1回1200レアルの計3600レアル)が支払われる。だが、コロナウイルスの蔓延が6月に入ってもピークの兆しを見せないため、支払い期間延長の必要が生じている。
 これに関して、ロドリゴ・マイア下院議長はかねてから「話し合いが必要」として、もう一度、600レアルずつ3回支払うべきだと主張していた。だが、パウロ・ゲデス経済相は9日、緊急援助金の延長を発表したものの、支払額は1回につき300レアルで、支払回数も2回に限定。その後は経済活動が正常に戻るとの計算の下、非正規雇用を促進するとの批判もある若年者雇用政策の「カルトン・ヴェルデ・アマレロ(CVA)」などを発表していた。
 このCVAに関しても、マイア議長は「これを実行するための法案が下院に届いていない」と強い難色を示している。マイア議長は緊急援助金に関して譲歩する姿勢をまったくみせず、むしろ連邦議会で緊急援助金延長法案を作成して通す可能性すら浮上している。
 11日、ボルソナロ大統領は連邦議会側の反応に反発し、「もし連邦議会が、300レアルを2回でなく、400レアル、500レアル、あるいは600レアルに戻すような法案を通したら、それに対して拒否権を発動する」と閣議で発言した。
 ボルソナロ氏は、「300レアルを2回だけで1千億レアルの費用が必要となる」「これより支払額をあげることになれば、Selic(経済基本金利)だってあがってしまう」との持論を展開している。

 一方、ダヴィ・アルコルンブレ上院議長は12日、ボルソナロ大統領が10日に発令した教育省に関するMPを連邦政府に差し戻した。このMPは、コロナウイルスの感染拡大が続く間、ウェイントラウビ教育相に連邦大学学長を選ぶ権利を与えることなどを定めていた。「連邦大学は左派の牙城」だと右派勢力は見ており、その学長に右派人材を指名することで解体を図る意図があると見られている。
 アルコルンブレ議長はこれを「憲法違反」と判断したため、審議を行わずに差し戻した。このMPに関しては、マイア下院議長も違憲性を主張し、承認されないとの見解を示していた。MPは差し戻された時点で効力を失うため、大統領も同日中に取り消した。
 ウェイントラウビ教育相は、中国や中国人に対する人種差別的発言や、「最高裁判事を全員逮捕せよ」などの問題発言で知られ、フェイクニュース関連捜査の捜査対象に含まれる可能性がある。