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《ブラジル》コロナ禍=今週、感染者100万人の大台超えへ=長引きそうな経済回復

営業再開後、初めての週末を迎えたサンパウロ市のショッピングセンター(Roberto Parizotti/FotosPublicas)

 【既報関連】新型コロナウイルス蔓延のピーク越えか、第2の波の到来を招くかの分かれ目にある中、現段階ですら「経済の回復は他国より遅い」との見通しが発表されたと16日付現地紙が報じた。
 16日夜の保健省発表による死者は1282人増(計4万5241人)、感染者数は3万4918人増(計92万3189人)だった。今の勢いならあと3日で感染者100万人の大台を超える可能性がある。
 ブラジルでは2月末~3月初旬に市内感染が始まっていたのに、保健省が社会隔離の基準などを表したのは3月13日。州や市が外出自粛令などを出したのも3月中旬で、感染拡大の抑制を困難にした。その事は、国内で検出されたウイルスの遺伝子情報などを研究する学者らも指摘している。
 対策の遅れに輪をかけたのは連邦政府と各自治体の足並みの乱れで、ボルソナロ大統領が「外に出よ」と呼びかけ始めた頃からは、緊急援助金の支払いが始まった事などもあり、隔離率の低下も始まった。これにより、外出自粛令による効果が出始めていた州でも感染が加速化した。
 大規模な感染症流行が起きた時の社会隔離と経済回復の関係は、スペイン風邪流行時の米国で、早期に社会隔離を採用した市は死者も少なく、経済の回復も早かったが、恒例行事を優先して隔離を遅らせた市は死者も多く、経済の回復も遅れたという一世紀前の例がある。
 ブラジルでは社会隔離採用が遅れた上、適用も中途半端で、感染者数、死者数共に世界第2位。隔離開始から3カ月後もピークを越えられず、経済活動の再開が遅れている。
 ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)ブラジル経済研究所のマルセル・バラシアノ氏は、国際金融機関(IMF)が発表した成長見通しと15日に中銀が発表した金融機関の専門家による成長見通しを掛け合わせ、パンデミック後のブラジルの経済回復は他国より遅いとの見通しを発表した。

コロナなど、政策や対策次第で救えたかも知れない犠牲者を悼み、社会的な距離を保って行われた聖市での抗議行動(13日、Felipe Campos Mello)

 ブラジルの20/21年の国内総生産(GDP)成長率は192カ国中171番目のマイナス1・63%で、南米ではマイナス10・14%と予想されるベネズエラに次ぐ悪い数字だ。バラシアノ氏によると、IMFやブラジル国内の金融機関の見通しは世銀などより楽観的で、次回発表の数字はより悲観的なる可能性がある。
 08年の世界的な金融危機の時は、家庭消費に牽引され、比較的早い経済回復を遂げたブラジルも、今回は、感染拡大の長期化で経済活動の再開が遅れ、他国の後塵を拝する事になりそうだ。
 非常に厳格な隔離政策採用で、感染者、死者共にごく少数なまま国境封鎖を解いたニュージーランドは、1週間後に輸入型の感染者を確認。震源地で都市封鎖も行った中国も、北京で市中感染が発生。日本でも少数だが集団感染が報告されるなど、感染終息後も気は許せない。
 まして、感染拡大の最中に隔離緩和を行った州や市は、感染者増や集中治療室の占有率上昇などで規制を厳しくする必要が生じる。だが、サンパウロ州内陸部では州政府による規制強化への不満が出て、規制再強化後も商店が営業を継続。州政府に「当初の基準維持を」と直談判する市長も出ている。