ブラジル日本移民112年を記念して、隠れキリシタン移民をテーマにした小説『クリスト・レイ』の掲載を始める。これは著者の中島宏さんによれば、10カ月あまりを執筆に費やし、2015年9月に刊行した作品だ。中島さんはサンパウロ州プロミッソンを訪れる機会に恵まれた際、たまたまクリスト・レイ教会に足を運んだようだ。
かつて上塚周平植民地といわれた日本人にゆかりの深いこの地には、福岡県今村出身の元隠れキリシタン移民がゴンザガ区に集住していた。彼らは資金を出し合って1938年に彼らの故郷にあるサンミゲル教会の複製を建立した。そんな特異な移民史から、中島さんはインスピレーションを受けたようだ。
中島さんは、1942年に当時中華民国であった天津市の日本租界にて生まれた。1944年、戦況悪化のため日本に帰国(愛知県一宮市)。
1956年、父がブラジルへの企業移住を決意、同年9月サンパウロ市に家族と共に移住した。中島さんは1964年、アルバレス・ペンチアード商高(現FECAP)を卒業。
1965年〜67年、アメリカと日本に長期滞在。帰伯後、父の経営する企業グループに入社し、1971年以降はグループの農牧会社専属となって牧場事業に専念した。2001年、グループの総責任者となり、現在に至る。
1990年代から趣味としての小説の執筆活動を続け、2013年2月に文藝春秋社より小説『ブーゲンビリア・遥かなる大地』を出版(ブラジルにっけい文芸賞受賞)。2015年に『クリスト・レイ/約束の地』を出版(サンパウロ)。2017年には『グレートプレーンズ』(同)を出版(同)している。