「炊き出しと聞いて住民の皆さんは『なんで?信じられない』といった様子でした」――ニッパキ紙の取材に対し、「Movimento Água no Feijão」(以後、MAF)発案者である白石テルマさんはサンパウロ市の貧困地区エリオポリスへ炊き出し弁当を届けはじめた日を振り返る。「政府ですら手を差し伸べず、どうせ誰も助けてくれないという失望のみが当初溢れていました」と支援活動で目の当たりにした厳しい現状を語った。
MAFプロジェクトは、貧困層に毎日食料支援をするために、オンライン募金で集まった資金で5月8日から現地で炊き出しを開始した。様々な団体から50人のボランティアが集まり、貧困者20万人が住むという同地区を中心に、サウーデ区のマウロ1、2エリアなどへ毎日200食を届けた。
同プロジェクトは日本食レストラン「藍染」のオーナー兼シェフの白石テルマさんが発起人になり、ジャパンハウス(JH、エリック・アレシャンドレ・クルッグ館長)とブラジル日本文化福祉協会(石川レナト会長)が後援、多くの団体がボランティアに参加した。
30日間で6000食を配布するというプロジェクトを無事完遂したものの、未だ多くの人が飢えに苦しんでいる現状があり、さらに7月までのプロジェクト延長を決定した。今後は配布拠点であるエリオポリス地区にあるサンバ教室Imperador do Ipiranga da escolaで区内住民をサポートメンバーに迎え、炊き出しを作っていく予定。
「例えるなら魚を与えながら釣り方も教えるといった試みです」と白石さんは目標を語る。これにより住人達が生産ルーティーンや食品衛生、栄養に関する知識や技術を習得することで、生活手段を得るきっかけとなり長期的メリットとなるのではと考えている。
ボランティアで参加したのは、ブラジル日本青年会議所(JCI・BJ、和田ルドルフ理事長)、文協青年部(ラファエル・ペターセン部長)、日伯文化連盟(アリアンサ、吉田エドアルド会長)国際キフ機構(小山田真会長)、サンパウロ大学生援護連盟(ABEUNI)、ASEBEX(日本元研修生留学生協会、ナターリヤ・ナカムラ・ゴウヴェイア会長)、JICA研修員OB会(ABJICA)といった日系団体を中心に幅広い団体が名を連ねる。
募金も引き続き受け付けている。8レアルで1人分の弁当が支援できる。資金だけでなく弁当の容器や食器の物資支援も受け付けている。詳細と寄付は以下から(サイト=https://www.aguanofeijao.org.br/?lang=ja)。サイトは一部日本語に対応している。
大耳小耳 関連コラム
◎
MAFプロジェクトの炊き出し弁当配布の際、コロナ感染を避けるために、受け取りの列には間隔をあけるよう住民に指示し、アルコールジェルやマスクなども用意された。地域住民コミュニティーによる協力も大きく「ボランティアも受け取る側も安全を保つために不可欠でした」と白石さんは語る。その場の飢えを凌ぐだけではなく自立のための活動へ繋げており、ボランティアと地域の信頼関係も根付いているようだ。