「コロナ禍で4月から一時的にオンライン授業になりました。毎年恒例の運動会やカンポリンポ祭(文化祭)、日系コロニアへの宿泊学習等の行事は一時中止、延期を検討しています。この災禍が早く終息して、8月からは校内で授業が再開できればよいのですが、まだ先行きはわかりませんね…」―サンパウロ日本人学校の曽川和則校長(54歳・長崎県)は、そう残念がりながら電話取材に答えた。
サンパウロ州政府から新型コロナウイルス感染防止による外出自粛令が発令されてから3カ月が過ぎた今、サンパウロ市カンポリンポ地区に校舎を構えるサンパウロ日本人学校はどうしているのか。
同校は、ブラジル進出日系企業の駐在員の子供が通う日本人学校で、小学生1年生から中学2年生までが在籍する。
現在、親が勤務する各企業の指示により同校の生徒は、半分以上が家族と共に日本に一時帰国している状態だという。コロナ前には137人いた生徒のうち10人が本帰国し、19日現在で127人に減った。ただしうち72人は在校中だが一時帰国している。
「この災禍で生徒の半分以上は企業命令で一時帰国しました。帰国した生徒は二重在籍として日中は日本の学校に通い、夜はオンラインで当校の授業を受けています」と学校の近況を語る。
当地に残った生徒に関して「授業後やオンラインによる保護者懇談会の中で、親御さんに生徒の直近の様子を伺うこともあります。この自粛生活でストレスが溜まって疲れ気味だったり、生活のリズムが崩れたりなどの意見も増えています。いつから学校は通常に戻るのかというご質問もいただきます。そういった声を聞くと本当に心苦しく、一刻も早く学校を再開させたいと思うばかりです」とのこと。
教師にも影響が出ており、「当校の教員は日本の文部科学省から派遣されているのですが、このコロナの影響で4月に派遣予定だった5名の教師が未だに渡航できずにいます。現在はオンラインアプリZOOMで日伯合同職員朝礼を行って連携を深め、日本からオンライン授業も行っています」という。
同校は、文部科学省指定の「AG5」(在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業)の一環で、昨年から遠隔授業の研究に取り組んでいたのでオンライン授業への移行が早かったという。
「昨年からAG5への取り組みを行っていたため、オンライン授業の基礎はある程度構築されており、スムーズに遠隔授業に移行できました。遠距離でも児童生徒がその学年でつけるべき学力は定着していると実感しています。一方でデメリットもあります。パソコンの画面上では子供達の手元や作業をしている様子が見えづらいことや、アプリ内でグループ分けをしても教師が全てを同時に確認できないこと等、まだまだ授業の試行錯誤は必要です」と述べた。
曽川校長は、「大変な状況ではありますが、サンパウロ日本人学校は教職員一丸となって子供達の学力維持向上を第一に考えています。今後どういった状況になるかはわかりませんが、8月に学校再開ができることを想定し、子供達が安心して登校できるよう徹底した校内感染防止対策も計画中です。現在の災禍が終息して、また以前のように児童生徒に会えることを心待ちにしています」ともどかしい現状への思いを明らかにした。
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サンパウロ日本人学校が毎年開催するカンポリンポ祭(文化祭)では、生徒による演劇や合唱が行われている。中でも祭りの最後に全生徒一丸となって楽器の演奏、踊り、ダンス等を盛大に披露する「全校サンバ」は定評があるとか。今年は一時中止、延期を検討しているが、現在のコロナ禍が終息して次回再開する時は、例年以上に盛大に行われるかも?