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《ブラジル》新型コロナでワクチン競争=中国製20日治験開始=英国製は先月末、年末に本格生産

6月10日、中国製ワクチンの署名をしたドリア州知事(左、Foto: Governo do Estado de São Paulo)

 中国製ワクチン導入を急ぐサンパウロ州政府と、英国製ワクチンを進める連邦政府が、まるで競うように交互にニュースを発信している。現段階では英国製が一歩先を行っており、中国製があとを追う形になっている。
 サンパウロ州立ブタンタン研究所が、今月20日から新型コロナウイルスに対する中国製ワクチンの治験を開始すると、ジョアン・ドリア州知事(PSDB)が6日に発表した。これは国家衛生監督庁(Anvisa)から3日に許可が出たことを受けて公表された。
 ワクチンは、中国のシノヴァック・バイオテック(Sinovac Biotech)社が製造したもの。同研究所のディマス・コーヴァス所長は、世界でテストされたワクチンの中で「最も有望なものの一つ」と見ている。
 同氏は、治験の結果が良ければ「2021年半ば」の予防接種開始を目標としており、「ワクチンの効果が証明されれば、すぐに接種できるようになり、ブラジルでの需要予想を補うために充分な6千万人分の投与量が確保されている。ワクチン申請のための国の基準は保健省が定める」と話している。
 治験は連邦直轄区に加え、サンパウロ、リオ・グランデ・ド・スル、ミナス・ジェライス、リオ、パラナ各州の12の研究センターで実施。今月13日時点で申し込みが可能な、医療従事者から選んだボランティア9千人に投与される。
 治験費用は8500万レアルと見積もられており、中国製ワクチン生産のための技術移転も視野に入れられている。コーヴァス氏は「今年の9月には1億本前後が生産できるようになり、このシノヴァック工場は年末までに3億~5億本分の生産能力を持つことになる」と述べ、「10月までに9千人の治験が終われば、今年の後半には予備的な分析結果が得られ、早ければ来年半ばにはワクチンの使用ができるようになる」と付け加えた。

 一方、連邦政府は6月27日、オックスフォード大学(英国)とアストラゼネカ(AstraZeneca)研究所との間で、新型コロナウイルスワクチンの国内生産のための協定を発表。第1段階として、今年12月と来年1月に3040万人分のワクチンの生産を予定している。
 英国製ワクチンは6月末から当地治験が開始されており、年末までに正式登録が終わり、本格生産が開始される予定。現段階で中国製よりも一足早い。
 保健省によると、試験段階でワクチンの効果と安全性が確認されれば、すぐに国民に投与することができるという。生産を担当するのは、フィオクルス(オズワルド・クルス財団)のバイオ・マンギーニョス(免疫生物学研究所)で、その投資額は2億8800万ドルに達する見込みだ。
 このワクチンがブラジルで正式に認可された場合、さらに7千万人分のワクチンを生産する第2段階の協定もあるとし、政府は10月から11月の間にワクチンの有効的な分析結果が得られることを期待している。